2019.09.29 15:15映画 『休暇』監督:門井肇、脚本:佐向大、原作:吉村昭「休暇」、撮影:沖村志宏、編集:金子尚樹、照明:鳥越正夫、美術:橋本千春、音楽:延近輝之、主演:小林薫、西島秀俊、大塚寧々、2008年、115分、 リトルバード。刑務官の平井(小林薫)は、独身で、6歳の男の子のいる美香(大塚寧々)との結婚が近づいてきていた。有給休暇を使い切っていたので、新婚旅行に出かけるのは諦めていた。職場の刑務所では、金田(西島秀俊)の死刑執行が決まる。支え役(執行時、絞首した死刑囚が落下したとき、下にいて体を押さえる役)をした刑務官には一週間の休暇が与えられるため、平井は自ら支え役を志願する。・・・・・・同監督の『棚の隅』(2007年)は、かなり出来がよかっただけに、こちらの出来は残念だ。冒...
2019.09.28 15:45映画 『悪人』監督:李相日、脚本:吉田修一、李相日、原作:吉田修『悪人』、撮影:笠松則通、編集:今井剛、音楽:久石譲、主演:妻夫木聡、深津絵里、2010年、139分、東宝。土木作業員の祐一(妻夫木聡)は、出会い系サイトで知りあった佳乃(よしの、満島ひかり)と何回か会っていたが、あるデートの晩に祐一が自分の車スカイラインで待っていると、佳乃は、偶然現れた圭吾(岡田将生)の車に乗って行ってしまう。佳乃は同じサイトで圭吾とも知り合いであったのだ。腹が立った祐一は、二人の乗った車を追う。その後同じサイトを通じ、祐一は光代(深津絵里)と出会う。・・・・・全体的に丁寧に誠実に撮られた映画で、脚本、映像、音楽ともに、かなり完成度の高い映画だ。身勝手な解釈ながら、日本映画の本道を行...
2019.09.28 12:05映画 『ワカラナイ』監督・脚本・プロデューサー:小林政広、撮影:伊藤潔、編集:金子尚樹、照明:藤井勇、主演:小林優斗、柄本時生、2009年、104分、ティ・ジョイ。16歳の亮は、コンビニでアルバイトして、ようやく食いぶちを稼ぐその日クラシーの生活を送っていた。再婚した父親は入院中の母親と亮を見捨て、生活費も入れないでいた。あるとき亮は、サンドイッチ代を浮かせるため、コンビニで釣り銭をごまかしたことがばれ、クビになる。母親も死に、病院には入院費の請求や葬儀屋が来て、金の催促をする。とてもそんな金など払えない亮は母親の遺体を勝手に引き取り、いつも一人で休んでいたボートに乗せ、海に流してしまう。・・・・・・冒頭から真っ黒な画面のまま、男の声で主題歌が流れ、なんだこりゃと思い、ハ...
2019.09.26 11:38映画 『赤い風車』監督:ジョン・ヒューストン、脚本:ジョン・ヒューストン、アンソニー・ヴェイラー、原作:ピエール・ラミュール『ムーラン・ルージュ』、撮影:オズワルド・モリス、編集:ラルフ・ケンプレン、音楽:ジョルジュ・オーリック、主題歌「ムーラン・ルージュの歌」、主演:ホセ・ファーラー、ザ・ザ・ガボール、1952年、123分、カラー、イギリス映画、原題:Moulin Rouge原題邦訳は『赤い風車』だが、DVDでは「ムーラン・ルージュ 赤い風車」となっている。舞台は1890年パリ、画家ロートレックの死にいたる前の約10年を描いた作品。といっても、自宅アパートと、世紀末パリのダンスホール「ムーラン・ルージュ」を中心とした恋の遍歴の物語。公爵家の息子でもあるが、事故で両足を...
2019.09.25 11:09映画 『夜の歌謡シリーズ 伊勢佐木町ブルース』監督:村山新治、脚本:舟橋和郎、撮影:星島一郎、編集:田中修、美術:中村修一郎、音楽:三木稔、主演:梅宮辰夫、宮園純子、1968年(昭和43年)、88分、東映。2010年5月に、『夜の歌謡シリーズ 長崎ブルース』(1969年)と同時に発売されたDVD。タイトルはいずれも青江三奈のヒット曲であり、本人もわずかに出演するが、いずれも梅宮辰夫と宮園純子主演の夜の盛り場を舞台にする映画で、こちらは純愛ものだ。バーをオープンさせるのに必要な一切合財を請け負うオープン屋・宮田(梅宮辰夫)の元に、新たな仕事が舞い込む。田舎の品のない土地成金、大倉(伴淳三郎)が、妾に店をやらせる話を持ち込むが、その妾も世話してほしいと言う。金払いはよいので、宮田はしぶしぶ引き受け、自...
2019.09.24 11:15映画 『夜の歌謡シリーズ 長崎ブルース』監督:鷹森立一、脚本:舟橋和郎、撮影:星島一郎、編集:田中修、美術:北川弘、音楽:伊部晴美、主演:松方弘樹、宮園純子、1969年(昭和44年)、88分、カラー、東映。長崎から東京に出てきた若い男を、ホストとしてスカウトした先輩ホスト(松方弘樹)が、弟を連れ戻しに上京したホステスの女(宮園純子)に惚れるが、彼女には長崎に婚約者(梅宮辰夫)がいた。弟を諦めて長崎に帰った女を追って長崎に来た男は、その婚約者の男と会い、女と別れてくれと頼みこむが・・・・・・まあよくある任侠的メロドラマ。当時の日本映画、喜劇路線とヤクザ路線の味わいは、こんな映画にも反映されている。みなさん若い当時の姿で懐かしい。歌舞伎町を思わせる街並みは少し出てくるが、前半はほとんど室内ロケで...
2019.09.23 14:35映画 『告発のとき』監督・脚本:ポール・ハギス、原案:マーク・ボール、ポール・ハギス、撮影:ロジャー・ディーキンス、編集:ジョー・フランシス、音楽:マーク・アイシャム、主演:トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン、2007年、121分、原題:In the Valley of Elah(エラの谷で)元軍人のハンク(トミー・リー・ジョーンズ)のもとに、息子マイクが行方不明という連絡が入る。マイクはイラクの戦闘から帰還したばかりで、もうすぐ自宅に戻るはずだった。ハンクは妻(スーザン・サランドン)を残し、軍の基地に単身向かう。軍にはすでに縁故のないハンクは警察に行き、女性刑事(シャーリーズ・セロン)に捜索を依頼するが、行方不明の軍人の捜索は軍がやるこ...
2019.09.21 16:15映画 『白痴』監督:黒澤明、脚本:久板栄二郎、黒澤明、原作:ドストエフスキー、撮影:生方敏夫、編集:杉原よ志、美術 :松山崇、音楽:早坂文雄、主演:森雅之。原節子、久我美子、三船敏郎、1951年、166分、モノクロ、松竹。166分の映画で、半分よりやや長い前半が第一部「愛と苦悩」、後半が第二部「恋と憎悪」。ドストエフスキーの原作を、戦後間もない札幌を舞台に変えている。沖縄から復員してきた亀田(森雅之)は、青函連絡船のなかで、赤間(三船敏郎)という男に出会う。亀田は、戦争犯罪人として死刑を執行される寸前に、犯人が他にいたことがわかり釈放されたのだが、そのときの恐怖心から、白痴となってしまったのだ。札幌に着くと、二人は写真館に飾ってある女の写真に見入る。それは那須妙子(...
2019.09.21 14:15映画 『マシンガン・パニック』監督:スチュアート・ローゼンバーグ、脚本:トーマス・リックマン、原作:ペール・ヴァールー、マイ・シューヴァル「笑う警官」、撮影:デヴィッド・M・ウォルシュ、編集:ボブ・ワイマン、音楽:チャールズ・フォックス、主演:ウォルター・マッソー、ブルース・ダーン、1973年、112分、原題:The Laughing Policemanサンフランシスコの市バスに、途中から乗った男が、いきならマシンガンをぶっ放し、ほとんどの乗客と運転手が死亡する。捜査に当たることになったジェーク(ウォルター・マッソー)は、被害者のなかに、常に相棒を組んできた同じ刑事のエバンスがいたことにショックを受ける。ジェークは新たな相棒レオ(ブルース・ダーン)と組まされ、聞き込みをするうち、エ...
2019.09.20 13:35映画 『ロシアン・ルーレット』監督:ゲラ・バブルアニ、原作:ゲラ・バブルアニ『13/ザメッティ』、脚本:ゲラ・バブルアニ、グレッグ・プルス、撮影:マイケル・マクドノー、編集:ゲラ・バブルアニ、デヴィッド・グレイ、音楽:マルコ・ベルトラミ、バック・サンダース、主演:サム・ライリー、ジェイソン・ステイサム、2010年、97分、原題:13ヴィンス(サム・ライリー)は、父親が入院中で、土地を担保に入れざるをえないような生活のなか、電気技師として配線工事にひとり出かけた先の家で、主人と友人らしき男が、一日で大金が手に入るという、怪しげな会話をしているのを耳にする。妻が帰ると主人は、ヤクの打ち過ぎで死んでおり、ヴィンスが警察を呼び、状況を話して帰る際、主人が大切そうにしまっていた封筒を盗み出す...
2019.09.19 14:05映画 『パリより愛をこめて』監督:ピエール・モレル、原作:リュック・ベンソン、脚本:アディ・ハサック、撮影:ミシェル・アブラモヴィッチ、編集:フレデリック・トラヴァル、音楽:デヴィッド・バックリー、主演:ジョン・トラヴォルタ、ジョナサン・リース・マイヤーズ、カシア・スムトゥニアク、2010年、95分、フランス映画、原題:From Paris with Loveうん、あっという間の95分、very good!リース(ジョナサン・リース・マイヤーズ)は、駐仏アメリカ大使館のスタッフであると同時に、小さな諜報活動もしていた。フィアンセのキャロリン(カシア・スムトゥニアク)から記念の指輪を送られた晩、命令で空港に出向き、麻薬撲滅の使命でやってきたワックス(ジョン・トラヴォルタ)を迎え入れ...
2019.09.18 04:45映画 『リリイ・シュシュのすべて』監督・脚本・編集:岩井俊二、撮影:篠田昇、音楽:小林武史、主演:市原隼人、忍成修吾、蒼井優、2001年、146分、カラー。栃木県足利市あたり、稲の葉が一面に広がる初夏の田園風景のなかに、制服を着た中学生がひとり、イヤホンをつけて音楽に聞き入っている。彼の名は雄一(市原隼人)、複雑な家族構成をもち、学校の仲間、特に修介(忍成修吾)らからいじめられたり、女子にからかわれたりするものの、やがて修介ともウマが合うようになり、人の金を盗んで、沖縄旅行にまで出かける。・・・・・・平均点は越えたが、奇を衒った、大いなる自己陶酔映画。盛大な祭りや宴会のあと、誰もいなくなった、無人の空間に、紙くずや酒瓶がころがっているような後味と印象をもつ映画。観る者を選ぶわけではない...