監督:鷹森立一、脚本:舟橋和郎、撮影:星島一郎、編集:田中修、美術:北川弘、音楽:伊部晴美、主演:松方弘樹、宮園純子、1969年(昭和44年)、88分、カラー、東映。
長崎から東京に出てきた若い男を、ホストとしてスカウトした先輩ホスト(松方弘樹)が、弟を連れ戻しに上京したホステスの女(宮園純子)に惚れるが、彼女には長崎に婚約者(梅宮辰夫)がいた。弟を諦めて長崎に帰った女を追って長崎に来た男は、その婚約者の男と会い、女と別れてくれと頼みこむが・・・・・・
まあよくある任侠的メロドラマ。当時の日本映画、喜劇路線とヤクザ路線の味わいは、こんな映画にも反映されている。
みなさん若い当時の姿で懐かしい。歌舞伎町を思わせる街並みは少し出てくるが、前半はほとんど室内ロケで、後半、舞台が長崎に移ってからは、オランダ坂、出島、グラバー亭、石だたみなどが画面に上る。
各人の生活や家具など、ホスト稼業ということで、当時にしては豪華だが、いま観ても古さを感じない。男の美顔のシーンまで出てくる。
私が中学生のころの映画で今回DVDが出ているのを知り、青江三奈のファンでもあったので、即購入し、初めて観た。
青江三奈はこの女のバーで歌う歌手として登場し、『長崎ブルース』『新宿サタデーナイト』を披露している。当時はこんな映画があるとは知らなかった。
いわゆるお水の世界の男と女の恋物語で、ストーリーは単純だが、セリフ回しに特徴があっておもしろい。他に、大原麗子、谷隼人、藤村有弘、若水ヤエ子、園佳也子、曽我町子なども出ていて楽しい。このころの役者たちは、みな演技がうまい。
今から11~12年前、青江三奈の復刻版CDが何枚も出るなど、ビクターも経営難と言いながら、その心意気には感謝したものだ。たぶんそれなりの要望や需要があってのことだろう。
この映画も、ヤクザ映画お馴染みの東映だが、こういう映画を復刻させるのは、いまだにこの手の映画が根強い人気を保っている証しであろう。
場面場面に気の利いた人情や仁義、カネより純愛、といった姿が見られ、当時の価値観や風俗を知る手がかりにもなる。
この時代は高度経済成長のただ中で、政治も保革伯仲、企業も労使対決、そこに多様な文化が一気に花開いたが、まだまだ純情にして骨の太い日本人が多かったようだ。
青江三奈の歌も、十年遅くても十年早くてもヒットしなかったろう。
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