映画 『夜の歌謡シリーズ 伊勢佐木町ブルース』

監督:村山新治、脚本:舟橋和郎、撮影:星島一郎、編集:田中修、美術:中村修一郎、音楽:三木稔、主演:梅宮辰夫、宮園純子、1968年(昭和43年)、88分、東映。


2010年5月に、『夜の歌謡シリーズ 長崎ブルース』(1969年)と同時に発売されたDVD。

タイトルはいずれも青江三奈のヒット曲であり、本人もわずかに出演するが、いずれも梅宮辰夫と宮園純子主演の夜の盛り場を舞台にする映画で、こちらは純愛ものだ。


バーをオープンさせるのに必要な一切合財を請け負うオープン屋・宮田(梅宮辰夫)の元に、新たな仕事が舞い込む。

田舎の品のない土地成金、大倉(伴淳三郎)が、妾に店をやらせる話を持ち込むが、その妾も世話してほしいと言う。

金払いはよいので、宮田はしぶしぶ引き受け、自分の付き合っているホステスのれい子(宮園純子)にうまく話をして、新たな店のママとするが、大倉はあくまでもれい子と懇(ねんご)ろになるために金を出したのだから、早く抱かせろと宮田に迫る。・・・・・・


伊勢佐木町は横浜の二つ隣の駅、関内に近い繁華街で、冒頭にも当時の映像が流れるが、今となってはそれほど活気はない。

黒澤明の『天国と地獄』(1963年)にもちょっと出てくる。


前半の伴淳の喜劇ムードから一転し、れい子のかつての情夫が出所するあたりから、シリアスな男と女のドラマに変わる。

登場人物が必ずなにがしかの役回りを演じ、登場人数に過不足がなく、セリフも小気味よい。

男女のストレートな純情があるからこそ、こうした任侠ドラマもありうるわけで、ストーリーも単純明快だ。

いわゆる名作扱いにならないまでも、エンターテイメントとして楽しめる内容だ。


純粋なやくざ映画やアクション映画ではないが、描きたいものがはっきり示され、大ヒットした「伊勢佐木町ブルース」にあやかっただけの作品ではないだろう。


ラストで山下公園が出てくる。宮田を一途に思いつづけてきたチャコ(清水まゆみ)が現れ、二人並んで画面から消えると、向こうにあるのは氷川丸だ。


日本人の男の純情や女の一途さというのは、今でもそんなに変わっていないのではないか。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。