監督:ゲラ・バブルアニ、原作:ゲラ・バブルアニ『13/ザメッティ』、脚本:ゲラ・バブルアニ、グレッグ・プルス、撮影:マイケル・マクドノー、編集:ゲラ・バブルアニ、デヴィッド・グレイ、音楽:マルコ・ベルトラミ、バック・サンダース、主演:サム・ライリー、ジェイソン・ステイサム、2010年、97分、原題:13
ヴィンス(サム・ライリー)は、父親が入院中で、土地を担保に入れざるをえないような生活のなか、電気技師として配線工事にひとり出かけた先の家で、主人と友人らしき男が、一日で大金が手に入るという、怪しげな会話をしているのを耳にする。
妻が帰ると主人は、ヤクの打ち過ぎで死んでおり、ヴィンスが警察を呼び、状況を話して帰る際、主人が大切そうにしまっていた封筒を盗み出す。
そこに入っていたメモどおりに、集配所で包みを受け取ると、中には携帯電話が入っており、翌日携帯が鳴り、指示どおりに列車に乗る。・・・・・・
冒頭、ヴィンスが他の男と、互いに相手の額に銃を突きつけているシーンから三日前のシーンになり、物語が始まる。
前半に少し女性が登場する以外、あとはすべて男しか出てこない。
ロシアン・ルーレットが繰り広げられる人里離れた巨大な館(やかた)内のシーンがメインとなる。当然、そこに集まる人間の説明と理由が語られるわけで、ヴィンスの周辺と、ジャスパー(ジェイソン・ステイサム)とその兄が、交互に描かれる。説明と理由を描くのはこの二人で充分で、ちょうどよい。
ロシアン・ルーレットのルールや、その陰で、生き残る人間に金を賭ける闇の世界の金持ちたちの生きざまは、見るうちにわかるので心配もない。
ルーレットそのものの描写は、もう少しカットを重ねて追い込んでもいいと思うが、別段気にならない。むしろ、ルーレットの合間になされる、当のプレイヤーや、彼らに金を賭ける男たちの姿にも時間を割いており、いずれもやや平板にも見えるが、その意味ではバランスがとれている。
さて、ラストをどう処理するのかと気になったが、これが、上映時間にしては長くはないものの、ストーリーとしては長い尾ひれがついた感じとなった。
ヴィンスが生き残り、ヴィンス自身も大金を手にして、貧乏な家族を救えて、ヴィンスと家族の喜びの笑顔で、ストップモーションに終わるだろう、とは思えない。そして、事実、とんでもない結果でラストになる。
『十二人の怒れる男』のように、ロシアン・ルーレットが中心で、そこだけをクローズアップにはしたくない、と同時に、ラストも、それまでの流れに見合うような悲劇に落ち着かせたかった、という監督の意図は明白だ。このへんがおそらく、アメリカ人でない(グルジア系フランス人)監督の個性であろう。
テーマがテーマなだけに、特異なストーリーにならざるを得ないのかもしれないが、この映画に対し、きっちりとした人物描写がない、と批判するのは、ちょっと筋違いではないのか。
ロシアン・ルーレットという、秘めたる違法の賭け事をおこなう場面を描きこむからには、ヴィンスにしろジャスパーにしろ、あまり本人や周辺を細かく描きすぎると、かえって他がかすんでしまうし、全体のバランスが崩れてしまうだろう。
この映画なりのエンタメ性もあることだし、笑えるような内容ではないが、それなりに楽しめればいいと思う。
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