映画 『マシンガン・パニック』

監督:スチュアート・ローゼンバーグ、脚本:トーマス・リックマン、原作:ペール・ヴァールー、マイ・シューヴァル「笑う警官」、撮影:デヴィッド・M・ウォルシュ、編集:ボブ・ワイマン、音楽:チャールズ・フォックス、主演:ウォルター・マッソー、ブルース・ダーン、1973年、112分、原題:The Laughing Policeman


サンフランシスコの市バスに、途中から乗った男が、いきならマシンガンをぶっ放し、ほとんどの乗客と運転手が死亡する。

捜査に当たることになったジェーク(ウォルター・マッソー)は、被害者のなかに、常に相棒を組んできた同じ刑事のエバンスがいたことにショックを受ける。

ジェークは新たな相棒レオ(ブルース・ダーン)と組まされ、聞き込みをするうち、エバンスと共に捜査していて迷宮入りとなった売春組織がかかわる殺人事件に思い当たり、その捜査を進めるうち、バス事件の犯人と迷宮入りした事件の犯人が同一人物であると確信するに至る。・・・・・・


1973年の映画であり、最近の映画に出てくるサンフランシスコとは、街並みもバスや車も違う。『刑事コジャック』や『刑事コロンボ』がそのころにはやっていた刑事ものであった。

そういう時代でもあり、原作・脚本のためもあるだろうが、主役の刑事がイケメンでもなければ、かっこいい銃さばきを見せるわけでもない。

ストーリーにも、意外性や恋愛が中心にからむわけでもない。

いかにも、刑事一筋の地味なブ男が、聞き込みや取り引きなどを通じ、地道な捜査をしていくプロセスが、丹念に描かれるだけだ。エロもサスペンスの要素もない。


そのかわりに、ジェークと上司、ジェークと仲間たち、ジェークとレオとのセリフが丁寧に書き込まれ、ウォルター・マッソーのにこりともしないデカづらとともに、プロの刑事の仕事ぶりが描写されつづける。


刑事たちが捜査で接するのは、みな、ひと癖ある者ばかりだ。売春婦、ポン引き、ムショにいる男、そして、レズ、ゲイまで、ストーリーに登場してくる。

決して派手ではないが、ジェークとレオの個性を際立たせながら、きちんと銃撃戦などアクションシーンも用意した映画だ。


惜しいのは、ラストで犯人が射殺されるのだが、映画的演出で、もうひとつ余韻を残すようにもっていければよかった。

日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。