2018.10.30 15:35映画 『渋谷』監督:西谷真一、原作:藤原新也、脚本:市川豊、撮影:中野英世、美術:石毛朗、音楽:谷口尚久、主演:綾野剛、佐津川愛美、2010年、78分。水澤(綾野剛)は、渋谷に棲む、カルチャー誌の売れないカメラマン。渋谷の街中にいる女の子の写真を撮り、それを元に記事を書いている。その雑誌社に求人応募してきた履歴書に、履歴欄など空欄で、写真を貼るところにイラストの貼ってあるものがあった。よく見ると、下のほうに「わたしを、さがして」とある。一方、街に出ると、駅前交差点付近で、母親らしき女性とケンカをしている女の子に出くわす。二人が去ったあと、そこに落ちていたペンダントを拾った水澤は、女の子を追うと、ある風俗店に入っていった。このユリカ(佐津川愛美)という子をその日の記事...
2018.10.30 03:08映画 『歌行燈』製作:永田雅一、監督:衣笠貞之助(きぬがさ・ていのすけ)、原作:泉鏡花、脚本:衣笠貞之助、相良準、撮影:渡辺公夫、照明:泉正蔵、美術:下河原知雄、編集:名取功男、音楽:斎藤一郎、主演:市川雷蔵、山本富士子、1960年、113分、カラー、大映。このころにしては珍しいカラー作品(コダック、イーストマンカラー)。ちなみに、国産初のカラー映画は、富士フィルムによる『カルメン故郷に帰る』(1951年、松竹)である。1943年に、監督:成瀬巳喜男、花柳章太郎、山田五十鈴主演で映画化されており、これが二度目の映画化。明治三十年頃、伊勢・山田、能の観世流家元・恩地源三郎(柳永二郎)を父に持つ喜多八(市川雷蔵)は、すっかり自らの芸にうぬぼれた盲目の謡曲師・宗山の家を訪ね...
2018.10.29 04:34映画 『陽のあたる場所』監督:ジョージ・スティーヴンス、原作:セオドア・ドライサー『アメリカの悲劇』、脚本:マイケル・ウィルソン、撮影:ウィリアム・C・メラー、編集:ウィリアム・ホーンベック、美術:ハンス・ドライアー、ウォルター・H・タイラー、音楽:フランツ・ワックスマン、主演:モンゴメリー・クリフト、エリザベス・テイラー、1951年、122分、モノクロ、原題:A Place in the Sunこんな映画も、かつてはテレビでやっていたのだ。それがなければ、知ったのはずっと後のことになるだろう。淀川長治氏の『日曜洋画劇場』でもやっていた。子供にとって、映画は、テレビで、一回しか、観れなかった時代だ。貧乏で職のない青年ジョージ・イーストマン(モンゴメリー・クリフト)は、伯父であ...
2018.10.28 13:02映画 『華麗なる一族』監督:山本薩夫、原作:山崎豊子、脚本:山田信夫、撮影:岡崎宏三、編集:鍋島淳、音楽:佐藤勝、主演:佐分利信、仲代達矢、月丘夢路、京マチ子、1974年、211分、東宝。万俵大介は、阪神間に絶対的な基盤をもつ万俵グループの中核をなす、阪神銀行のオーナー頭取である。それでも阪神銀行は都市銀行中10位であり、大介は、やがてくる金融再編成に向け、阪神銀行が何とか有利な条件で生き延びることができるよう模索していた。長男・鉄平(仲代達矢)は阪神特殊鋼専務として、自社独自で銑鉄を生産するため、自前の溶鉱炉を建設するのが夢であった。日銀から大同銀行に天下った頭取・三雲祥一頭取(二谷英明)は、鉄平と昵懇であり、溶鉱炉建設のため、巨額の融資を承諾することになるが、一方、鉄平...
2018.10.27 02:39映画 『ワン、ツー、スリー/ラブハント作戦』監督・製作:ビリー・ワイルダー、脚本:ビリー・ワイルダー 、I・A・L・ダイアモンド、撮影:ダニエル・L・ファップ、美術:アレクサンドル・トローネル、音楽:アンドレ・プレヴィン、主演:ジェームズ・キャグニー、1961年、109分、モノクロ、アメリカ映画、原題:ONE,TWO,THREEコメディ映画である。ドイツ語も出てくるが、MGM映画である。よくできた、いわゆるスラップスティック・コメディで、アドリブによるドタバタ喜劇ではない。タイトルは内容を暗示しているが、セリフにも出てくる。名監督ビリー・ワイルダーには、これより後に作られる、マリリン・モンロー主演の『お熱いのがお好き』など、コメディも多い。悪女をテーマとしたシリアスな作品『深夜の告白』や『情婦』...
2018.10.26 04:29映画 『共喰い』監督:青山真治、原作:田中慎弥、脚本:荒井晴彦、撮影:今井孝博、編集:田巻源太、音楽:山田勳生、青山真治、主演:菅田将暉、田中裕子、光石研、2013年、102分。田中慎弥の平成24年芥川賞受賞作品の映画化で、数々の賞を得ている。青山真治は、『Helpless』『EUREKA』『サッド ヴァケイション』で知られる。ドラマは、昭和63年初夏から年明けて平成を迎えたあたりの時間で進む。山口県下関市に近い河口の町が舞台。17歳の高校生・篠垣遠馬(とおま、菅田将暉)は、父・円(まどか、光石研)と、愛人・琴子(ことこ、篠原友希子)と暮らしている。遠馬の産みの母、仁子(じんこ、田中裕子)は、そこから少し離れた川沿いで、ひとりで鮮魚店を切り盛りしている。仁子は戦争の最...
2018.10.25 04:37映画 『道』監督:フェデリコ・フェリーニ、脚本:フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネッリ、撮影:オテッロ・マルテッリ、音楽:ニーノ・ロータ、主演:アンソニー・クイン、ジュリエッタ・マシーナ、1954年、104分、イタリア映画、イタリア語、モノクロ、原題:LA STRADA(道)フェリーニの代表作であり、ニーノ・ロータの哀愁漂う曲「ジェルソミーナ」でもよく知られている作品。兄弟の多く貧しい母子家庭の娘、ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は、大道芸人ザンパノ(アンソニー・クイン)に一万リラで買われる。ザンパノは大きな三輪の車に荷台を乗せ、あちこちで大道芸を披露し、ジェルソミーナは寝起きを共にしながら、ザンパノに付き従うだけであった。ジェ...
2018.10.24 10:50映画 『飢餓海峡』監督:内田吐夢、原作:水上勉、脚本:鈴木尚之、撮影:仲沢半次郎、編集:長沢嘉樹、音楽:冨田勲、主演:三國連太郎、左幸子、伴淳三郎、高倉健、1965年、183分、モノクロ、東映。戦後まだ間もない昭和22年9月、北海道・岩内で質屋強盗をはたらいた三人組は、鉄道で函館まで出て、青函連絡船で本州に逃げる予定だった。函館近くまで来ると、港は大混乱していた。台風の来襲により、連絡船・層雲丸が転覆し、投げ出された多数の遺体を収容している最中だったのだ。三人は逆にこの混乱を利用し、どさくさ紛れに、暴風雨のなか小さな舟を漕ぎだし、下北半島へと向かう。一人残った犬飼多吉(三國連太郎)は、大湊の女郎屋に厄介になり、そこで杉戸八重(左幸子)と出遭う。一方、函館警察署の刑事・弓...
2018.10.23 14:35映画 『人妻集団暴行致死事件』監督:田中登、脚本:佐治乾、原案:長部日出雄、撮影:森勝、編集:鈴木晄、音楽:石間秀機、篠原信彦、主演:室田日出男、古尾谷雅人、1978年、96分。これは、昔、映画館で観ただけなので、かなりのシーンを忘れていた。そもそも白黒だったような気がしたが、カラー作品であった。ポルノというジャンルにしては、珍しく、キネマ旬報邦画ベストテンに入った作品だ。9位であったが、それでも大変な快挙である。日本アカデミー賞監督賞も受賞している。埼玉県の川沿いにある地方都市が舞台だが、出演する若者のうちのひとりの実家は農家である。線路わきの工事現場で働くシーンも多く、団地ができたというセリフもあり、高度経済成長が背景にある。二十歳前後の若い男三人は、地元のくされ縁仲間であるが...
2018.10.22 12:36映画 『帰らざる夜明け』監督:ピエール・グラニエ=ドフェール、原作:ジョルジュ・シムノン、脚本:ピエール・グラニエ=ドフェール、パスカル・ジャルダン、撮影:ワルター・ウォティッツ、音楽:フィリップ・サルド、主演:アラン・ドロン、シモーヌ・シニョレ、1971年、89分、フランス映画、カラー、原題: LA VEUVE COUDERC(未亡人クーデルク)1934年、フランスの田園地帯が舞台。ジャン(アラン・ドロン)がいなかの道を歩いていた。バスが停まり、中年女性が大きな荷物を下ろしているところに通りかかったので、それをかかえ持って、その女の家に行く。荷物は鶏卵用の石油孵化器であった。彼女クーデルクは夫を亡くしており、老いて耳の遠い夫の老父と、二人暮らしであった。男手がないため、彼女...
2018.10.20 01:47映画 『ロミオとジュリエット』監督:フランコ・ゼフィレッリ、原作:ウィリアム・シェイクスピア、脚本:フランコ・ゼフィレッリ、フランコ・ブルサーティ、マソリーノ・ダミコ、撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス、編集:レジナルド・ミルズ、音楽:ニーノ・ロータ、主演:レナード・ホワイティング、オリヴィア・ハッセー、1968年、138分、英伊合作、英語、原題:Romeo and Juliet7回の映画化のうち、最も有名な作品となっている。ジュリエット役オリヴィア・ハッセー、ロミオ役レナード・ホワイティングは、撮影当時それぞれ、16歳と17歳であった。より原作に近い年齢という。レナード・ホワイティングはロンドン出身、オリヴィア・ハッセーはブエノスアイレス出身。監督のゼフィレッリはフィレンツェ生...
2018.10.18 15:28映画 『にごりえ』監督:今井正、製作会社:文学座、新世紀映画社、原作:樋口一葉〔1872(明治5年)~1896年(明治29年)〕、脚本:水木洋子、井手俊郎、撮影:中尾駿一郎、編集:宮田味津三、音楽:團伊玖磨、主演:第一話・丹阿弥谷津子、第二話・久我美子、第三話・淡島千景、1953年、130分、モノクロ、第一話・約31分、第二話・約36分、第三話・約63分。樋口一葉は、五千円札に描かれた女流作家である。とはいえ、24歳で結核により他界している。これは、明治期の小説家・樋口一葉の短編小説を三本合わせたオムニバス映画である。ほとんど、原作に忠実と言われている。これはおそらく、一葉が現実に見た明治のこの時代における、若い女たちの悲しい物語だ。映像は、内容を自然にそのままを描いて...