2020.03.29 10:57映画 『黒い十人の女』監督:市川崑、脚本:和田夏十、製作:永田雅一、撮影:小林節雄、築地米三郎(特殊)、音楽:芥川也寸志、主演:船越英二、山本富士子、岸恵子、1961年、103分、白黒、大映。伊丹十三と改名する前の伊丹一三、ハナ肇とクレージーキャッツ、昨年3月に死去した歌手の森山加代子が、短いシーンで映る。先週21日に死去した女優時代の宮城まり子が、準主役で出演している。ひとりの和装の女が、夜道をひとりで歩いている。その風双葉(かぜ・ふたば、山本富士子)を、そこここに待ち伏せていた八人の女が、一列になって後を追う。追い詰めたところで、話は過去に戻る。テレビ局のプロデューサー、風松吉(かぜ・まつきち、船越英二)は、小料理屋を営む妻・双葉がいるにもかかわらず、新劇女優、石ノ下市...
2020.03.28 07:32映画 『ニーチェの馬』監督:タル・ベーラ、アニエス・フラニツキ、脚本:タル・ベーラ、クラスナホルカイ・ラースロー、製作:テーニ・ガーボル、撮影:フレッド・ケレメン、編集:アニエス・フラニツキ、音楽:ヴィーグ・ミハーイ、主演:ボーク・エリカ、デルジ・ヤーノシュ、2011年、154分、モノクロ、ハンガリー語、ハンガリー、フランス、スイス、ドイツ合作、原題:A torinói ló(=The Turin Horse、トリノの馬)『倫敦(ロンドン)から来た男』(2007年)で有名なハンガリーの監督、タル・ベーラの作品。いまだ存命中だが、自ら、最後の作品と宣言している。タイトルロールのあと、音楽のない真っ暗な画面のまま、ナレーションが入る。1889年1月3日。哲学者ニーチェは、通りか...
2020.03.25 13:13映画 『隣の影』監督:ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン、製作:グリームル・ヨンソン 、 シンドリ・パル・キヤルタンソン 、 トール・シグリヨンソン、脚本:ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン 、 ハルダー・ブレイズフィヨルズル、撮影:モニカ・レンチェフスカ、編集:クリスティアン・ロズムフィヨルド、音楽:ダニエル・ビヤルナソン、衣装:マーグレット・アイナースドッティール、主演:ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン、エッダ・ビヨルグヴィンズドッテル、2017年、89分、アイスランド、デンマーク、ポーランド、ドイツ合作、アイスランド映画、アイスランド語、原題:UNDIR TRÉNU(=電車の中で)原タイトルは、つながった住宅のなかで、の意味だろう。閑...
2020.03.23 13:14映画 『インビジブル・ウィットネス 見えない目撃者』監督:ステファノ・モルディーニ、製作:リンダ・ヴィアネッロ 、 ロベルト・セッサ、オリジナル脚本:オリオル・パウロ、脚本:マッシミリアーノ・カントーニ 、 ステファノ・マッダレーナ 、 ステファノ・モルディーニ、撮影:ルイージ・マルティヌッチ、編集:マッシモ・フィオッキ、美術:パオロ・ボンフィーニ、衣装:マッシモ・カンティーニ・パッリーニ、音楽:ファビオ・バロヴェーロ、主演:リッカルド・スカマルチョ、マリア・パイアート、2018年、102分、イタリア映画、原題:II TESTIMONE INVISIBLIE(=見えない証人)スペイン映画『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(2016年、106分、原題:Contratiempo(=後退))をリメイクした作...
2020.03.21 11:09映画 『テナント/恐怖を借りた男』監督・主演:ロマン・ポランスキー、脚本:ロマン・ポランスキー、ジェラール・ブラッシュ、原作:ロラン・トポール『幻の下宿人』、撮影:スヴェン・ニクヴィスト、編集:フランソワーズ・ボノー、音楽:フィリップ・サルド、共演:イザベル・アジャーニ、1976年、126分、フランス映画、英語、原題:The Tenantポランスキー、42歳のときの主演作品。後半では、彼の女装も見られる。ポランスキーの格闘技の師匠であったブルース・リーの姿も、劇中、上映されている映画として映っている。撮影のスヴェン・ニクヴィストは、『仮面/ペルソナ』(1966)や『ファニーとアレクサンデル』(1982年)など、イングマール・ベルイマン監督の作品で有名。ほとんどの俳優が英語圏の出身でない...
2020.03.18 08:16アニメ映画 『名探偵コナン ゼロの執行人』監督:立川譲、脚本:櫻井武晴、原作:青山剛昌、撮影:西山仁、編集:岡田輝満、音楽:大野克夫、主題歌:福山雅治「零 -ZERO-」、主な声の出演:高山みなみ、古谷徹、2018年、110分、東宝。劇場版『名探偵コナン』シリーズを観るのは初めて。これほど質の高いアニメとは思わなかった。アニメ映画の名にふさわしく、脚本・映像・音入れが完璧で、大人でも充分楽しめる。アニメであっても、映画であり、脚本は最も重要だ。少しずつ事件が発生していくテンポ、かかわりある人物の登場のタイミング、それなりの伏線のばら撒き、コナンの推理の程度、二か所以上で進行する話の進め方と交え方、伏線の回収がよい。110分という時間も、その長さにふさわしい質と量で、慣れていないと、こうした時間...
2020.03.16 13:03映画 『病院坂の首縊りの家』監督:市川崑、脚本:日高真也、久里子亭、原作:横溝正史、製作:市川崑、馬場和夫、黒沢英男、撮影:長谷川清、編集:小川信夫、長田千鶴子、音楽:田辺信一、主演:石坂浩二、佐久間良子、1979年、139分、東宝。脚本の久里子亭とは、市川崑と妻・和田夏十が、共同執筆のときに使うペンネーム。『犬神家の一族』(1976年)とほぼ同じ陣容のスタッフであるから、内容も同じ類いの映画であるが、『犬神家~』よりは、脚本が劣化しており、それゆえ、映画全体に<締まり>がなく、エンタメ性も消えてしまった。画面に少ししか映らない人物を含め、登場人物がたいへん多い。きちんとした説明があるにはあるが、その部分は、時代考証のドキュメンタリーのような解説になってしまい、興を削いでしまう。...
2020.03.15 11:09映画 『アド・アストラ』監督:ジェームズ・グレイ、脚本:ジェームズ・グレイ、イーサン・グロス、製作:ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、ジェームズ・グレイ、ロドリゴ・テイシェイラ、アンソニー・カタガス、撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ、編集:ジョン・アクセルテッド、リー・ハウゲン、音楽:マックス・リヒター、主演:ブラッド・ピット、2019年、123分、原題:Ad Astra(=to the stars)、20世紀フォックス冒頭に、近い未来の話、と出る。宇宙飛行士・ロイ・マクブライド少佐(ブラッド・ピット)は、比較的、地球に近い宇宙空間にある軌道施設を修理しているとき、爆発事故に見舞われる。これは、地球規模のサージ電流が襲ったためであった。数日後、ロイは、...
2020.03.14 10:53映画 『カット/オフ』監督・脚本:クリスチャン・アルヴァルト、撮影:ヤクブ・ベイナロビッチュ、音楽:クリストフ・シャワー、マウルス・ロナー、主演:モーリッツ・ブライプトロイ 、ヤスナ・フリッツィー・バウアー、2018年、132分、ドイツ映画、R15+、原題:Abgeschnitten(=カットオフ、切断)検死官のポール(モーリッツ・ブライプトロイ)は、顎が砕かれた女性の遺体を検視解剖するうち、砕かれた顎から頭部に無理やり詰め込まれた小さなカプセルを見つける。注意深くカプセルを開けると、中から紙切れが出てきた。顕微鏡で覗くと、そこには、娘のハンナの名前と電話番号が書かれていた。万一のことを思い、すぐ電話すると、ハンナは、誰にも言わず、エリックという男の指示に従ってほしい、でな...
2020.03.13 11:36映画 『恥』監督・脚本:イングマール・ベルイマン、撮影:スヴェン・ニクヴィスト、主演:マックス・フォン・シドー、リヴ・ウルマン、1968年、103分、白黒、スウェーデン映画、スウェーデン語、原題:SKAMMEN交響楽団でヴァイオリンを弾いていたヤーン(マックス・フォン・シドー)とエーヴァ(リヴ・ウルマン)夫婦は、街から離れたところにある小さな島で、農業をして平穏に暮らしていた。街に作物を売りに行くときは、フェリーを利用している。ある日、突然、上空を戦闘機が何機も飛んでいき、やがて二人の暮らす家の近くにも砲弾が雨のように落とされる。二人はおんぼろの車で逃げ惑うが、途中、車両が道を塞いでいたので、やむを得ず自宅に引き返す。やがて人々は強制的に、街のとある建物に集められ...
2020.03.12 05:02映画 『タロウのバカ』監督・脚本・編集:大森立嗣、撮影:辻智彦、音楽:大友良英、主演:菅田将暉、YOSHI、太賀、2019年、119分、R15+、東京テアトル。大森立嗣は、『ゲルマニウムの夜』(2005年)、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(2010年)で知られる。大賀(現・仲野太賀)は、『桐島、部活やめるってよ』(2012年)のバレー部員・小泉風助役であった。YOSHIは、これが俳優デビュー作である。高速道路が交わるあたり、東京の堀切JCTか小菅JCTあたり下の河原や付近の広場を主な舞台とし、三人の行く当てのない10代の若者が、その行き先に戸惑う姿を、ほとんどを手持ちカメラと即興的なセリフで、ありのままに描き出そうとした作品だ。タロウ(YOSHI)は、生まれてから一度も...
2020.03.11 12:05映画 『グリーンブック』監督:ピーター・ファレリー、脚本:ニック・ヴァレロンガ、ブライアン・ヘインズ・カリー、ピーター・ファレリー、撮影:ショーン・ポーター、編集:ポール・J・ドン・ヴィトー、音楽:クリス・バワーズ、主演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、2018年、130分、原題:Green Book製作や脚本には、本作品の主役となるヴァレロンガの息子・ニック・ヴァレロンガが加わっている。タイトルの「Green Book」とは、アフリカ系の黒人が、アメリカ人旅行する際のためにと作られたガイドブック「黒人ドライバーのためのグリーン・ブック」からとられている。この小冊子は劇中にも何度か出てくる。地図以外に、黒人専用のホテルや、黒人でも食事できるレストランなどが紹介されて...