監督:ステファノ・モルディーニ、製作:リンダ・ヴィアネッロ 、 ロベルト・セッサ、オリジナル脚本:オリオル・パウロ、脚本:マッシミリアーノ・カントーニ 、 ステファノ・マッダレーナ 、 ステファノ・モルディーニ、撮影:ルイージ・マルティヌッチ、編集:マッシモ・フィオッキ、美術:パオロ・ボンフィーニ、衣装:マッシモ・カンティーニ・パッリーニ、音楽:ファビオ・バロヴェーロ、主演:リッカルド・スカマルチョ、マリア・パイアート、2018年、102分、イタリア映画、原題:II TESTIMONE INVISIBLIE(=見えない証人)
スペイン映画『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(2016年、106分、原題:Contratiempo(=後退))をリメイクした作品。
通信大手の実業家のアドリアーノ・ドリア(リッカルド・スカマルチョ)は、冬山の別荘で逢引き中に、同室にいた愛人ラウラ(ミリアム・レオーネ)を撲殺した容疑をかけられ、現在は外出することもなく、自分のマンションに引きこもり、容疑者として警察による逮捕を待つ状態であった。
そこに、ドリアの弁護士パオロの紹介で来たという年配の女性の弁護士ヴァージニア・フェラーラ(マリア・パイアート)が現われ、自分はキャリアもあり、一度も敗訴したことがなく、自分が味方に付いたからには、絶対に無実の罪を晴らす、と言い誇った。
二人の対話が始まり、初め警戒していたドリアも、フェラーラの質問に少しずつ事実を話し始めていく。・・・・・・
なかなかおもしろい映画だ。さすがに、ラストは言わないほうがよいだろう。
ドリアは、妻子があるにもかかわらず、愛人ラウラと過ごすことも多かったが、家庭を壊すことまではしたくない。そんな決意で最後の時を過ごした二人は、山奥のホテルからの帰る途中、林道で鹿が飛び出してきたため、対向車と交通事故を起こしてしまう。
二人は無事だったが、対向車の若い男の運転手は、即死であった。
気丈なラウラは、おろおろするドリアと自分たち二人のことを考えて警察には通報せず、運転手の遺体と車の処分をドリアに頼み、もう会わないことにして、ドリアの車で逃げ去るが、途中でエンジンが利かなくなり、そこへ通りかかった年配の男性ガルリ(ファブリツィオ・ベンティヴォリオ)の助けにすがることになる。ガルリはドリアの車を牽引し、自宅まで行き、車を修理する。その間、ラウラはガルリの自宅に通され、その妻はお茶を出す。妻が、これが自慢の息子なのよ、と言って見せた写真に、ラウラは驚愕する。そこに写っていたのは、先ほど事故で死亡させた若い男性であった。
一方、ドリアは、トランクに入れた遺体ごと、車を湖に沈めていた。
このへんまでの事実を基本として、平行してドリアとフェラーラの対話が進んでいく。
ドリアは、当初、フェラーラにも本当のことを言わず、作り話などをするが、フェラーラはそうした嘘や捏造を見抜き、ドリアもようやく観念して、まだ誰にも言っていない真実をフェラーラに話す。
フェラーラは、対話の冒頭、どんな詳細なことでも本当のことを言ってくれないかぎり、あなたの無実の罪を晴らせない、と言っていたので、ドリアは本当のことをすべてフェラーラに話す。休憩しましょうと言ってコーヒーを買いに出て行くフェラーラに、礼まで言う。
対話劇を中心とした室内劇で退屈になるのかなと思いきや、これをよくわかっている監督で、過去の映像を適宜挿入させている。密会の現場などや、事件のあった雪山のホテル、海岸線、湖など、合間合間に空撮による壮大な景色を入れることで、室内劇の閉塞感を免れる映像努力をしている。ラウラは写真家ということもあるが、挿入される景色はまことに美しく、とてもイタリア映画とは思えず、北欧の映画のようだ。
カメラも、対話部分は、短いカットやバストアップを多用し、二人の距離や立ち居振る舞いに対する演出も効いている。二人の俳優の演技もうまい。
サスペンスには違いないが、脚本に牽引力があり、映像を含めエンタメ性もあり、ラストまで一気に観ていける作品だ。
ラウラ役のミリアム・レオーネ、ドリアの妻ソニア役のサラ・カーディナレッティは、二人ともきれいな女優だ。
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