映画 『抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より』

監督・脚本・脚色:ロベール・ブレッソン、原案:アンリ・ドヴィニ、撮影:レオンス=アンリ・ビュレル、録音:ピエール・アンドレ・バートランド、音楽:ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト、主演:フランソワ・ルテリエ、1956年、97分、モノクロ、フランス映画、原題:Un Condamne a mort s'est echappe ou Le vent souffle ou il veut(死刑囚は逃げた 或いは 風は己の望む所に吹く)


1957年のカンヌ国際映画祭で、監督賞を受賞している。


1943年、フランス軍のフォンテーヌ中尉(フランソワ・ルテリエ)は、ドイツ占領下のフランス・リヨンで、レジスタンス運動をしたかどで、ドイツ軍に連行される。移送中に車からの脱走を試みるが失敗し、手錠を付けたままモンリュック監獄の独房に入ることになる。

狭い独房には、格子の嵌った窓があり、やがて、中庭を散歩する囚人の一人に外部との連絡をとってもらうことにする。・・・・・・


ブレッソンの他の作品同様、この映画でも、本物の俳優は使わず、素人を出演させている。


いわゆる脱獄劇であるが、フォンテーヌ以外には、終盤で、同室となり一緒に脱獄することになる16歳の少年が準主役となるくらいで、ほかには数人の囚人が、洗面のときなどに出てくるくらいだ。

モノクロで、全編、BGMがなく、導入部はじめ、時折流れるのは、すべてモーツアルトの曲だけである。


脱獄劇は、数多い映画において、一定のジャンルを作り上げている。スタンリー・クレイマーの『手錠のまゝの脱獄』(1958年)や、ジャック・ベッケルの『穴』(1960年)、フランクリン・J・シャフナーの『パピヨン』(1973年)などが有名だ。


本作品は、脱獄について、それを決意するまでと、その用意周到ぶりを、微細に描写する。見ていて冷や冷やさせるなか、ようやく壁の外に二人が降り立ち、遠くへと去って行く。


全体に笑うシーンなどなく、BGMも入らず、余計な事象を略す、いつものブレッソン映画であり、同時に、フォンテーヌのモノローグが多く、囚人や少年との会話にも無駄がない。カメラは小まめに動くものの、それでもこの100分近い映画が、退屈にならないとは言えない。特に、実際に脱獄を始めるまではそうだ。


ブレッソンの作品は、彼がその信念をもって作っている映画であり、そこに映画一般のエンタメ性を求めても、無理な話であろう。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。