アニメ映画 『ほしのこえ』

監督・脚本・原案・作画・美術・編集:新海誠、音楽:天門、主題歌:「THROUGH THE YEARS AND FAR AWAY (HELLO, LITTLE STAR)」、作曲:天門、作詞:K. JUNO、唄:Low(みずさわゆうき)、2002年、25分、配給:コミックス・ウェーブ


新海誠の初の劇場公開作品で、当時普及し始めた携帯電話のメールを媒介に、遥か彼方の宇宙空間で活躍する少女ミカコと、地球に残った少年ノボルの遠距離恋愛を描く。

キャッチコピーは、「私たちは、たぶん、宇宙と地上にひきさかれる恋人の、最初の世代だ。」であり、本編は、ミカコとノボルが同時に話す言葉「ここにいるよ」、で終わる。


登場するロボット兵器トレーサーは、エヴァンゲリオンを想起させるが、以降アニメ界に多大な影響を与えた『新世紀エヴァンゲリオン』効果は、新海作品にも見られる。


その後の新海作品でお馴染みとなる、空、雲、雷、雨、太陽などが登場し、すでに美しく描かれている。宇宙空間での闘いのようすも、スピード感がある。

携帯電話のメールのやりとりが続くが、ミカコが地球から遠ざかれば遠ざかるほど、ノボルへのメール到着は時間がかかり、そうした物理的距離に破壊されることなく、二人の思いは遠ざかることはない。


少年少女の夢物語といえばそれまでであるが、その後の新海の作品が圧縮されたカタチで詰まっている。

内容は、次回作『雲のむこう、約束の場所』(2004年)、『秒速5センチメートル』(2007年)へと受け継がれていく。

日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。