監督・製作:ロバート・アルドリッチ、脚本:ルーカス・ヘラー、原作:ヘンリー・ファレル、撮影:アーネスト・ホーラー、編集:マイケル・ルチアーノ、音楽:フランク・デ・ヴォール、主演:ベティ・デイヴィス、ジョーン・クロフォード、1962年、134分、白黒、原題:What Ever Happened to Baby Jane?
幼い頃のジェーン・ハドソンが、子役のスターとして、舞台で歌い、踊っている。それを舞台袖から見る母と、姉のブランチ・ハドソン。
その後、立場は入れ替わり、ジェーン(ベティ・デイヴィス)は成人しても、演技もできず、現在は酒浸りの生活を送っている。ブランチ(ジョーン・クロフォード)は、女優として確かなキャリアを積んでいたが、ある日、車の事故により、下半身不随となり、車いすの生活を余儀なくされる。
今では、大きな家に、姉妹二人が過ごすが、ブランチは二階の自分のへやからほとんど出ず、ジェーンや家政婦エルヴァイラ・スティット(メイディ・ノーマン)の世話になっている。そんなブランチを横目に、ジェーンは、幼いころの栄光が忘れられず、もう一度、舞台に立って踊りたい、という夢を追う。・・・・・
子供のころから、互いの名声や才能に嫉妬し合ってきた姉妹の現在のようすを描き出した作品。ベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードという、当時の米国の二大スターが共演するということでも注目を浴びた作品だ。
ベティ・デイヴィスの怪演を楽しめる映画でもある。ベティ・デイヴィスにとって、『イヴの総て』(1950年)の12年後の作品で、54歳になっており、故意にエグすぎるメイクアップで登場する。ジョーン・クロフォードは58歳で、姉妹の姉を演じている。車イスの生活であり、妹に虐待を受ける役柄でもあり、バストショットの多いシーンで、顔の演技を楽しめる。クロフォードにとって、人気の衰え始めたころの作品でもあり、身につまされるような内容を演じたことになる。
二人の邸宅内の会話劇が中心であるが、隣家のベイツ夫人(アンナ・リー)や、ピアニスト募集により出会うエドウィン・フラッグ(ヴィクター・ブオノ)やその母親デリラ・フラッグ(マージョリー・ベネット)のようすもあり、室内劇とも言えない。
ジェーンが何度か外出するシーンもあるので、新聞社や銀行など外の世界も映されるが、外出時のジェーンは、常ににこやかである。
内容は、タイトルどおり、何がジェーンに起こったか、である。
ブランチを殴る・蹴る・拘束する・食事にスズメやネズミの死骸を出す、といった異様さはあるが、完全に狂人とも言えず、生い立ちの過程で、名女優であった姉に嫉妬し、それだけに、幼少のころの自分を再度実現させたい、という夢に執着する屈折した心理のありさまを、大胆な演出で描き出している。
ジェーンのブランチに対する仕打ちはひどいものだったが、ラストの浜辺のシーンで、車の事故の真相がブランチの口からジェーンに話され、それを聞いて嬉々としてジェーンが二人分のアイスクリームを買ってくる。
警察により追い詰められ、何ごとかと集まった人々の輪の中を、まるで子供時代を思い出すかのようにジェーンが踊りはしゃぐシーンで、ストーリー上は、静かに幕となる。
このシーンで、姉妹の正負はゼロとなった。
笑えるシーンなど一切なく、ジェーンに何が起きているかをひたすら描いた作品だ。
0コメント