監督:ダリル・デューク、脚本:アーナス・ボーデルセン、カーティス・ハンソン、撮影:ビリー・ウィリアムズ、音楽:オスカー・ピーターソン、主演:エリオット・グールド、クリストファー・プラマー、1979年、106分、カナダ映画、原題:The Silent Partner
もうすくクリスマスを迎える12月中旬、トロントのショッピングモール1階にある銀行に勤めるマイルズ・カレン(エリオット・グールド)は、手に取った小切手の写しに、奇妙なメモがあるのを見た。そこには、「カネを出せ、俺は拳銃を持っている」と書かれていた。いたずら程度に思い、責任者にも告げずにいたが、休憩でモール内に出ると、サンタクロースが義捐金募集のプラカードを持って、立っていた。そのプラカードにある「G」と、先ほどのメモにあった「G」の字が全く同じであり、そのサンタクロースに変装した男ハリー・レイクル(クリストファー・プラマー)の目付きがおかしいことで、カレンは、この男が銀行強盗を狙っているものと直観する。
銀行に戻ると、やはりその男がやってきて、カレンに、カネを出せ、という。現金を何回かに分けてカウンターに出したが、トレイに残る札を出したところで警報ベルが鳴り、男は逃げた。カウンター下には、まだ4万ドル近い現金が残っていたが、カレンはそれを、誰にも知られぬように、自分のバッグの中にこっそり入れてしまう。そして、そのトータルの金額が強奪されたことにしてしまった。
強盗を撃退したことで、カレンは世間から英雄扱いで報道されるが、自分が強奪した金額とテレビインタビューでカレンが言う被害金額が一致しないことに気づいたハリーは、カレンに執拗に電話し、かすめ取った分をよこせ、と迫る。・・・・・・
ラストでは、クリストファー・プラマーの女装も見られるなど、ハリーは、強盗以上にそもそも変態である。カレンは、いわば横領をしているにもかかわらず、平然と過ごし、基本はまじめな男であり、決して狡猾に頭の回る男ではないが、ハリーの計画を逆手にとってカネもうけをしたという点では、知恵が働くのである。警察の事情聴取や、ハーフミラー越しの面通しでも、ハリーが中にいるのに、犯人はこの中にいない、と嘘をつく。もちろん、ハリーは捕まれば、自分も捕まるからである。
ある別件で、カレンは、ハリーを警察に逮捕させる。ハリーは、釈放されてから、脅迫電話をかけてくるのである。ハリーには、エレイン(セリーヌ・ロメス)という情婦がいたが、エレインはもともと、認知症のカレンの父の面倒を見ていた看護婦であり、父の葬儀にも出席し、カレンと親しくなる。エレインはやがて、ハリーの女であったことを告げ、カレンのほうに気持ちが動くが、それを知ったハリーは、カレンのアパートにいるエレインを殺害してしまう。
一方、カレンには、同僚のジュリー・カーヴァー(スザンナ・ヨーク)がいて、付かず離れずの仲であった。エレインと会ったことで、ジュリーへの気持ちは遠のくが、エレインが死に、また、ハリーも撃たれて死んだことから、かすめ取ったカネを持って、二人して銀行を辞め、遠くにいくことになる。ジュリーは、カレンの悪事を、すべて知っているわけではない。
サスペンスというには、さほどシリアスな展開もなく、ハリーの恐ろしさは確かにあるのだが、カレンという男のキャラ設定がしっかりとせず、あまり感情移入できない。知恵の回る男なら、それらしいエピソードを他に入れるなどすべきであった。全体に、締まりのない、ぼやけた感じのストーリー展開となってしまっている。
おそらく、そのまじめさを示すのが、前半におけるジュリーとの不器用な恋愛ごっこなのであろうが、それだけだと、カレンは本来、不器用なほどのまじめな男である、というだけで、エレインとの運びや、ハリーを出し抜くことのできる一面もある、などは説明できていない。
ラストでは、カレンは、逃げようとしたハリーに肩を撃たれ、救急車で運ばれるが、何も知らないはずのジュリーは、ハリーのバッグを持って、一緒に救急車に乗るのである。その少し前のシーンからして、ジュリーはそれとなくカレンのバッグの中身を見ており、中に4万ドルが入っていることを知っているフシがある。
こうして、カレンは、犯罪を犯したにもかかわらず、相手のハリーが撃たれ、沈黙のパートナーとなり、二度に渡り、強盗と対決したことで、周囲からは同情され、めでたしめでたしで終わるのである。
もちろん、実際に警察が動けば、いずれハリーは捕まるわけであるが、映画ではそこまでの追求をしない。コメディ的要素や恋愛の混じったサスペンスと言えばよいのだろうが、映画を観慣れている側からすると、どうしても、締まりのない作品に思えてしまうのである。
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