映画 『ブライトバーン 恐怖の拡散者』

監督:デヴィッド・ヤロヴェスキー、製作:ジェームズ・ガン、ケネス・ファン、脚本:ブライアン・ガン、マーク・ガン、撮影:マイケル・ダラトーレ、編集:アンドリュー・S・アイゼン、ピーター・グヴォザス、音楽:ティモシー・ウィリアムズ、主演:エリザベス・バンクス、デビッド・デンマン、ジャクソン・A・ダン、2019年、91分、原題:Brightburn


2006年、カンザス州ブライトバーンで農場を営むカイル(デビッド・デンマン)とトリ(エリザベス・バンクス)・ブライア夫婦は、子宝に恵まれなかった。ある夜、大音響とともに停電となり、次のシーンでは、赤ん坊が映る。やがてその男の子は少しずつ成長していき、今では小学生になっていた。それは夫婦の子であり、ブランドン(ジャクソン・A・ダン)と名付けられていた。 

ある日、父親に草刈りを任されたので、草刈り機のスターターを引くが、なかなかエンジンがかからない。腹立ちまぎれにブランドンが草刈り機を放り投げると、重いはずであるのに、数十メートルも遠くに飛んで行った。草刈り機は刃が回ったまま仰向けになっていたが、ブランドンが試しに、その回転する刃に手を突っ込むと、何と刃のほうがぼろぼろに壊れ、ブランドンの手は無傷であった。ブランドンは、もしかしたら自分には、何か特殊な能力があるかも知れないと悟る。

ある夜、ブランドンは、夢遊病者のように納屋に行き、ある場所を夢中で叩いていた。気付いたトリが声をかけると、ブランドンは我に返った。

その後、ブランドンの周囲には、常識では考えられないような事象が起き、やがて人間が殺されていく。・・・・・・


中盤でわかることだが、ブランドンは、誰かから養子として迎えた子ではなく、ある日、この夫婦の営む農場の奥の林に落ちてきた小さな宇宙船の中にいた子であった。超能力がいいほうに使われず、復讐に使われることになる、という設定だ。残虐なシーンや痛いシーンもあり、ジャンルとしては、たしかにホラーである。


草刈り機の一件は、始まりから13分、ブランドンの素性がはっきりするのが、35分で、種明かしはわりと早いところでなされている。残りの約1時間は、ブランドンの起こす残忍な事件が中心で、宇宙船や、それがなぜ落下したか、ブランドンはなぜ「悪」のほうに走るのか、といった説明はない。初めからホラーとわかっているので、そうした詳細を描写しないのは、かえってよかったのではないか。

となると、残虐シーンの描写であるが、本作品もホラーの王道に則っている。そろそろそのシーンが来るかな、と思えば、そうなり、観ている側を飽きさせない。また、「タイムリー」に出てくる残忍なシーンも、なかなかエグいものがあり、映像やその編集がうまくなさされているシーンが多く、よくやっていると思う。目に突き刺さったガラスの破片を抜くシーンや、持ち上がった車が落下し、顔面を強打した男は、下顎がはずれている、など。ブランドンが食事のとき、フォークの先を噛んでおり、その先が変形しているというのはご愛嬌だ。

ラストでは、空高く浮かび、空間に停止しているブランドンに、旅客機がぶつかるが、旅客機は木っ端微塵になり、ブランドンは無傷のままという「決定打」が観られる。


肩の凝らないホラーとして、気軽に見られる点は評価したい。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。