監督・脚本:バート・レイトン、撮影:オーレ・ブラット・バークランド、編集:ニック・フェントン、クリス・ギル、ルーク・ダンクリー、ジュリアン・ダート、音楽:アン・ニキティン、2018年、116分、英米合作、原題:American Animals
退屈な大学生活を送っていたウォーレン(エヴァン・ピーターズ)とスペンサー(バリー・コーガン)は、現状を打破し、特別な人間になりたい思っていたが、その行き着く先は、かつて、司書のグーチ(アン・ダウド)に案内された大学図書館の特別室に展示してある大型の稀覯本を盗み出すことであった。それは、時価1200万ドルを超えると評価されるジョン・ジェームズ・オーデュボンの画集『アメリカの鳥類』(1838年)であった。二人は、エリック(ジャレッド・アブラハムソン)とチャズ(ブレイク・ジェンナー)を仲間に引き入れ、強奪の計画を立てる。
はじめ、4人は、メイクやカツラにサングラスで老人の姿に変装して図書館に向かうが、そこには司書が4人も集まっており、計画実行を断念する。ウォーレンが電話で閲覧の予約をとり、翌日あらためて4人で強奪を実行する。司書はグーチひとりであり、身動きできないようにしたが、不手際が重なり、結果的に、『アメリカの鳥類』以外の二冊の本だけを奪うだけに終わる。・・・・・・
2004年、ケンタッキー州の大学生4人が、刺激がほしいというだけの理由で大学図書館から時価1200万ドルのヴィンテージ本を盗んだ実際の事件を題材とし、既に7年の懲役刑を終えている現在の本人たちのインタビューが、随所に挿入され、ストーリーが展開していく。
若者たちによる犯罪映画というより、ドキュメンタリー映画と言ったほうがよいかも知れない。通常の映画のように、物語展開や起承転結を想起すると裏切られてしまう。前半のウォーレンとスペンサーの家庭のようすや、実行するにあたり加わったエリックとチャズの生きざまなどにも触れられるが、犯行の動機自体は、ラストで登場するグーチ本人によって語られたとおり、いくら4人がそれらしい意図をもっていたとしても、第三者からすれば、自己中心のわがままな行いに過ぎなかった。
しかも、一番の目的であった『アメリカの鳥類』の奪取は実現できず、犯行は中途半端に終わり、スペンサーなどは屋上で見張り役をしていただけにもかかわらず、当然ながら、共犯として逮捕され、7年の実刑判決を受けるのである。このいわゆる「ダサい」犯行の結末は、実にみじめであり、ラスト近くで語られる本人たちのインタビューからは、他の3人が、必ずしもウォーレンを信用していなかったことさえも明かされる。
撮り方は異なるが、1999年4月に起きたコロンバイン高校銃乱射事件をテーマにした『エレファント』(2003年)を彷彿とさせる。
事実に基づいた作品であり、事実のほうは、刺激がほしいから、という動機から始まった犯行であるが、そこは多少脚色してでも、動機にもっと強いものを含ませ、鮮明にしてもよかったのではないか。監督が脚本を兼ねており、そのくらいの芸当はできたはずだ。つまらないものを、多少脚色してでもおもしろく見せるのも、映画という魔術であろう。
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