映画 『マラノーチェ』

監督・製作・脚本・編集:ガス・ヴァン・サント、原作:ウォルト・カーティス、撮影:ジョン・J・キャンベル、音楽:ピーター・ダマン、キャレン・キッチン、クレイトン・リンゼー、主演:ティム・ストリーター、1986年、78分、白黒(エンディングだけカラー)、原題:Mala Noche(スペイン語、=Bad Night)


ゲイであることを公表しているガス・ヴァン・サント、34歳のデビュー作品。


オレゴン州の雑貨屋で一人で働くウォルト(ティム・ストリーター)はゲイであり、たまたま店に来たメキシコ人のゲイの二人連れ、ジョニー(ダグ・クーヤティ)とロベルト(レイ・モンジュ)のうち、ジョニーに一目惚れする。ジョニーは18歳と言われているが、実際にそうかどうかはわからない。二人とも、まだ少年にしか見えず、ジョニーは英語がわからない上、まだまだ子供っぽく落ち着きもない。

三人はじゃれ合っていたが、ウォルトが先に鍵を持って帰ってしまったため、ロベルトは中に入れなくなり、仕方なく、一緒に後を追ってくれたウォルトのアパートに転がり込む。ウォルトはジョニーの代わりにロベルトを抱こうとする。初めは拒否していたロベルトだが、結局、二人は、一線を超える。

翌朝、街を歩きながら、この夜を指してウォルトは、Mala Noche だったと言う。

ジョニーを諦めきれないウォルトであったが、そのうちジョニーが行方不明になったことを知る。一人きりになったロベルトは、その寂しさもあってか、風邪を引いてしまい、ウォルトは看病する。またもウォルトのアパートに来たロベルトは、風邪も治ったが、二人は以前より親しみを覚えるが、ウォルトはやはり、ジョニーのことを忘れられなかった。・・・・・・


その後、ロベルトは、不法移民の疑いでアパートに来た警官に撃たれ、死んでしまう。ロベルトは、拳銃を持っていたこともあり、アパートの奥に隠れたが、見つかってしまったのだ。それを知り、ウォルトは涙ぐむ。

ある晩、ウォルトが帰ると、家の隅にジョニーがいた。いなくなった理由やそこかた逃げてきた理由を聞き、二人は仲良くなるが、ジョニーはすぐに、出て行ってしまう。翌日の休みに、車を走らせ、店の前を通ると、ジョニーが手持ち無沙汰で佇んでいた。が、ウォルトは笑顔で挨拶して、通り抜けるだけだった。


デビュー作として、予算もあまりないなかで、どうしても、ゲイとゲイとの出会いや一目惚れについて、撮りたかったのであろう。

実験映画としては、自分の思う通りに、思う通りの映像を撮れたのではないか。脚本・編集まで自分でやったところに、監督業をしていこうという強い意志をみることができる。ただし、白黒にするなら、画面が常に暗すぎる。もう少し、白と黒のコントラスト、グラデーションを使ってもよかった。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。