映画 『サスペクト -薄氷の狂気-』

監督・脚本:デビッド・レイモンド、撮影:マイケル・バレット、編集:ジム・ペイジ、音楽:アレックス・ルー、音楽製作:ベンジャミン・ウォルフィッシュ、主演:ヘンリー・カビル、2018年、98分、カナダ映画、原題:Night Hunter


若い女性の遺体が見つかり、刑事ウォルター(ヘンリー・カビル)らは、ようやくの思いで、容疑者と思われる男サイモン(ブレンダン・フレッチャー)を逮捕する。

女性プロファイラーのレイチェル(アレクサンドラ・ダダリオ)がサイモンの取り調べに当たる。犯罪を類推する断片的な痕跡は見つかるものの、サイモンは自白せず、知的障害があるようで、言葉の意味が通じていないようだ。・・・・・・


この100分近い映画は、尺を90分にしてでも、作り直したらもっとよくなるだろう。完成品の一歩前の状態のようだ。なくてもかまわないシーンを割愛し、長めのシーンは、始まりか終わりを切ってしまったほうがよい。

監督が脚本を兼ねると、大いなる成功作か大いなる失敗作に分かれるが、本作品は失敗に終わっしまった。

邦画タイトルのサブタイトルにある薄氷は、終盤で出てくるが、ここを含め、もっと大胆なタイトルにしたほうがよかったかも知れない。作品自体の出来がよくないと、邦題をつけるにも戸惑ってしまったのかも知れない。


それぞれの役者は、それなりの演技を披露していて問題ないのだが、私がよく言う「並列つなぎ」の映画であり、メリハリもなく、エンタメ性もない。恐ろしいとか気持ち悪いとかいった感情移入もできない。

種明かしされて、ああそうだったかとは思っても、もっと起伏に富み、伏線を張ることができていれば、その効果はもっと大きくなったはずだ。


湖の一部に、薄い氷の部分を探し出すのは苦労しただろうし、撮影や照明、美術も努力しているのはわかるが、脚本が平板なだけに、残念な仕上がりになってしまった。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。