映画 『寒い国から帰ったスパイ』

監督:マーティン・リット、脚本:ポール・デーン、ガイ・トロスパー、原作:ジョン・ル・カレ『寒い国から帰ってきたスパイ』、撮影:オズワルド・モリス、編集:アンソニー・ハーヴェイ、音楽:ソル・カプラン、主演:リチャード・バートン、クレア・ブルーム、オスカー・ウェルナー、1965年、112分、モノクロ、イギリス映画、原題:The Spy Who Came in from the Cold


秘密情報部ベルリン代表部のリーマス(リチャード・バートン)は、東ベルリンの検問所で、リーメックの帰りを待っていた。リーメックは、東ベルリンに浸透していたイギリス秘密情報部の協力者であったが、自転車で検問を普通に通過したところで、東ドイツ側に射殺されてしまう。

目前でこれを見たリーマスは、ロンドンに呼び戻され、メーリック暗殺は、ナチ党員で、東ドイツ情報機関幹部のムント(ペーター・ファン・アイク)の命令によるもの、と聞かされる。リーマスは秘密情報部長官、通称コントロール(シリル・キューザック)から、解雇を通知されて酒浸りとなり、図書館の整理係として再就職し、そこで働く英国共産党の党員ナンシー(ナン、クレア・ブルーム)と恋仲となる。

そんなある日、リーマスは食料品店の店主を殴り、警察に逮捕される。だが、これは、東側のスパイを、自分に近づけるための作戦の始まりであった。・・・・・・ 


カメラがすばらしいと思って観ていたが、英国アカデミー賞で撮影賞ほか、作品賞、美術賞、男優賞、を受賞している。

冒頭、タイトルバックからつばがるファーストシーンは、導入部にしてすでに圧巻だ。検問所という現場、今にも協力者が帰ってくる夜の検問所という現場の雰囲気が、奥行、広がり、緊迫感、カット割りで、十二分に伝わってくる。


ストーリーそのものは、会話で進むので、初めのうち人物関係が掴みにくいが、リーマスがオランダに行くあたりからは、順次飲み込めてくる。


東西冷戦時代の当時、こうしたスパイものフィクションは<はやり>であったようだが、本作品も、スパイという<仕事>の属性や非人間性がよく描写されていて興味深い。

ラストでは、まさにベルリンの壁を乗り越えんとするところで、ナンもリーマスも射殺されてしまい、悲劇のドラマとして終了する。


いずれにしても、本作品はやはり、カメラワークを楽しむ映画であろう。


クレア・ブルームは、チャールズ・チャップリンの『ライムライト』(1952年)で映画デビューした女優である。

音楽のソル・カプランは、20世紀フォックスの大御所アルフレッド・ニューマンの弟子であり、マリリン・モンロー主演の『ナイアガラ』(1953年)などを手掛けたベテランである。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。