監督・脚本:佐藤純彌、原作:辺見じゅん『決定版 男たちの大和』、製作:角川春樹、撮影:阪本善尚、編集:米田武朗、音楽:久石譲、主演:仲代達矢、鈴木京香、松山ケンイチ、蒼井優、2005年、145分、東映。
2005年4月6日、ある女性(鈴木京香)が、枕崎の漁業協同組合に来て、北緯30度43分・東経128度04分の位置まで、船を出してほしい、と言う。組合長に軽くあしらわれるが、それを脇で聞いていた神尾克己(仲代達矢)は、翌日たまたまその女性と遭い、その訳を聞く。
神尾は、船で15時間かかり波も荒れるが、本当にそこまで行きたいのか、と女性に尋ねるが、むしろ神尾も、心の内では、その場所に行きたいと思っており、女性の願いを受け入れ、自らの漁船「明日香丸」で、神尾を手伝う中学3年の敦(池松壮亮)と三人で、その海へと向かう。
その場所は、戦艦大和が、沈んだ場所であった。・・・・・・
原作が角川文庫(角川春樹事務所ハルキ文庫)であった関係で、角川春樹が製作に乗り出し、戦後60年を記念して作られた作品。配給が東映であるのも興味深い。
製作費に約25億円かかったが、興行収入では、その倍近い51億円を稼ぎ出し、その後DVDなども飛ぶように売れた。
戦艦大和の左側はホンモノそっくりに作られ、その他は美術班が、ほとんどビルを作るような作業を丹精込めて続けた。CGも過不足なく的確に使われ、編集も冴えている。また、久石譲の音楽もメインテーマからBGMに至るまで、映画内容にふさわしい旋律と音響である。
戦争ものになると、俳優陣が多く起用されるが、若い軍人が中心となる内容のなか、白石加代子、高畑淳子、余貴美子といったベテラン女優陣のわずかな登場シーンで、映像とストーリーがぎゅっと締まる。
人気作品であるので、多くのサイトでレビューがなされたが、映画そのものへの批判はほとんどない。また、演出についても、映画をあまり見ておらず、たまたま人気作だから、これを見て批判しているようなレビューも多く見られる。
例えば、いよいよ出征の日、海軍特別年少兵である神尾克己(松山ケンイチ)を慕う同級生・妙子(蒼井優)が、バス停まで見送りにくるシーン、武運長久を祈るといって、妙子が克己に、厳島神社のお守りを渡すシーンだ。もしかしたら、二度と会うことはあり得ないかも知れない、どちらかが死ぬかも知れない、という別れのシーンだ。
このシーンにおいて、二人のカット割りが多い理由がわからない、とするレビューが多い。全編の流れからすれば、カット割りの数としては、多くもなく少なくもなく、適切だ。それぞれのカットで、二人それぞれに表情も違う。この二人の置かれた状況からして、プロであればこれくらいのカット割りにするであろう。
戦争ものにジャンル分けされるが、決して妙な反戦ムードを煽る映画ではない。戦艦大和とともに生きた若い軍人の純情そのものを描くことに徹底した映画であり、この点で製作者側の意図ははっきりしており、高く評価できる。
限られた製作費と日数で、俳優やエキストラを軍人に仕立てる訓練なども考慮すれば、日本の誇る力作と言って過言でない。
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