監督:インドゥジヒ・ポラーク、脚本:インドゥジヒ・ポラーク、パヴェル・ユラーチェク、原作:スタニスワフ・レム『マゼラン星雲』、撮影:ヤン・カリシュ、音楽:ズデニェク・リシュカ、衣装:エステル・クルンバホバー、主演:ズデニェク・シュチェパーネク、オットー・ラツコヴィチ、1963年(昭和38年)、88分、モノクロ、チェコスロバキア映画、チェコ語、原題:Ikarie XB-1
共産主義下のチェコで製作されたSF映画。2016年に4K修復され、同年の第69回カンヌ国際映画祭のカンヌ・クラシックスで上映され、日本でも、昨年5月に公開された。
キューブリックの『2001年 宇宙の旅』(1968年、昭和43年)その他、これ以降のSF映画に、大きな影響を与えたとされている。
2163年、宇宙船「イカリエ-XB1」は、生命探査のため、アルファ・ケンタウリ系へと向かっていた。
乗員は男女合わせて二十数名であり、なごやかにダンスパーティも開かれるなどしていたが、緊急の案内が流れる。前方には難破船らしきものが浮遊しており、アバイェフ艦長(ズデニェク・シュチェパーネク)は、二人の乗員を調査に出すことにする。・・・・・・
タイトルバックと同時に、 ミハル(オットー・ラツコヴィチ)が傷を負い、船内を逃げ回る映像が流される。そして、本編開始とともに現在の船内の状況になるのでちょっと戸惑うが、ミハルの件は、映画終盤で、ようやくタイトルバックとつながりをもつ。
さまざまな計器類、装置、宇宙服やそれに付けられたスイッチやランプ類など、こうしたセットや仕掛けを作るだけでも大変な労力であろうし、船内の夫と地球にいる妻が会話するシーン、多くのモニターのシーン、宇宙空間のシーンなど、1963年(昭和38年)当時としては、先端技術を先取りするようなシーンばかりであり、驚嘆に値する。キューブリックが観ていれば、相当な刺激を受けたであろう。
ストーリーとしては、突っ込みどころも多く、筋書き上、緊迫感を持続できているかと言われれば、やや総花的になっており、多くの人物に等しく焦点を合わせるより、特定の人物らに軸を絞ってもよかった。
難破船での出来事のあと、乗員たちに病的な「疲労感」と「眠気」が襲うあたりは、もう少し解説がほしいところではあったが、その理由は、睡眠から覚めた乗員たちの会話から想像するよりほかにない。
多少の出来事を経験しながら、最終的には、アルファ・ケンタウリ系の、とある惑星に到達するところでハッピーエンドになる。
フリッツ・ラングの『メトロポリス』(1927年)は、未来都市を描いたSF映画の先駆ととれるが、本作品は戦後SF映画の嚆矢ともなる作品で、一度は鑑賞しておいていいだろう。
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