映画 『アギーレ/神の怒り』

監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク、撮影:トーマス・マウホ、編集:ベアーテ・マインカ=イェリングハウス、音楽:ポポル・ヴー、録音:ヘルベルト・ブラッシュ、主演:クラウス・キンスキー、1972年、93分、西ドイツ映画、原題:Aguirre, der Zorn Gottes


1560年、スペインの探検隊が、伝説の都市エル・ドラドを発見しようと、アンデスの険しい山道を歩いていた。

途中、これ以上の前進は困難とする分遣隊長ペドロ(ルイ・ゲーハ)に対し、副隊長であるアギーレ(クラウス・キンスキー)は反対し、ペドロを撃つ。アギーレの執念を知った他の者たちは、アギーレに付き従い、冒険を続ける。・・・・・・


『フィツカラルド』(1982年)と比べると、時間も短く、やや見劣りするが、ヘルツォークがアギーレに仮託した執念は、映像やクラウス・キンスキーの怪人的演技によって、よく表現されている。

一行には、スペイン王家を代表して分遣隊に派遣された貴族、フェルナンド・デ・グスマン(ペーター・ベルリング)もおり、食事のシーンなどから、隊の他のメンバーとの身分の相違も、露骨に表現されている。


何と言っても、冒頭からの数分のシーンがみごとだ。

脇は断崖絶壁のような険しい山道を、一隊が昇り、また、降りて歩いていく。初め、横に撮ったシーンをわざと縦に編集したのかと思われたが、カメラは一行を見た通りに映している。


筏(いかだ)での川下りのシーンなどをはじめ、前人未到の地での撮影こそ、ヘルツォークの真骨頂なのであろう。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。