映画 『波止場』

監督:エリア・カザン、脚本:バッド・シュールバーグ、撮影:ボリス・カウフマン、編集:ジーン・ミルフォード、音楽:レナード・バーンスタイン、主演:マーロン・ブランド、エヴァ・マリー・セイント、リー・J・コッブ、1954年、108分、モノクロ、原題:On the Waterfront


マーロン・ブランド、30歳、エヴァ・マリー・セイントは29歳で、映画初出演となる作品。マーロン・ブランドの演技が、高く評価された映画としても有名だ。


ニューヨークのある港湾での荷揚げには、多数の港湾労働者が雇われていたが、正規の組合はなく、実質的に、ギャングまがいのジョニー(リー・J・コッブ)が、暴力と脅しで牛耳っていた。元ボクサーのテリー(マーロン・ブランド)もその一員として、ジョニーに可愛がられていた。テリーの兄・チャーリー(ロッド・スタイガー)は、この組合の幹部でもあった。

テリーは、ジョニーに命じられ、組合を裏切ったとして、組員のジョーイを、その住まいのアパートの屋上に呼び出す役をすることになる。ジョーイは、屋上から突き落とされて殺されてしまう。組がそこまでするとは思っていなかったテリーは、それでも殺しの手助けをしたことに気が咎める。

ジョーイの遺体のそばには、ここを教区とするバリー神父(カール・マルデン)と、ジョーイの妹・イディ(エヴァ・マリー・セイント)がいた。・・・・・・


1954年のアカデミー賞を、以下の8部門で受賞した。

アカデミー作品賞、アカデミー監督賞(エリア・カザン)、アカデミー主演男優賞(マーロン・ブランド)、アカデミー助演女優賞(エヴァ・マリー・セイント)、アカデミー脚本賞(バッド・シュールバーグ)、アカデミー撮影賞 (白黒部門)(ボリス・カウフマン)、アカデミー美術監督賞 (白黒部門)(リチャード・デイ)、アカデミー編集賞(ジーン・ミルフォード)。


いわゆる<正義が悪に勝つ>ドラマであるが、テリーが、神父の言葉や説諭により、またそれ以上に、イディとの交友のうちに、真人間になっていくプロセスが、巧みな演出と映像で表現されている点がすばらしい。

映画とは映像であり、要するにカメラワークである。脚本も演技も、それをとらえるカメラがあってこそ輝く。撮影賞で受賞しているのも頷ける。

わずかなカメラの高低、フレームどり、パン、奥行き、切り返しなど、モノクロでは当然のことでもある陰影に富んだ映像以上に、撮影の技量が活かされている。


人間性に変化が現れるテリーのキャラクター描写が軸をなすのであるが、テリーの生い立ち、八百長ボクシングについての事実などはさらりと台詞で触れられ、そうした過去をもつテリーの現在は、鳩の世話やイディとのやりとりなどにつなげて描写している。


エヴァ・マリー・セイントは、ヒッチコックの『北北西に進路を取れ』(1959年)でも有名である。ジョニー役のリー・J・コッブは、シドニー・ルメット『十二人の怒れる男』(1957年)でも、3番陪審員として、熱の入った演技を披露した。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。