映画 『崖っぷちの男』


監督:アスガー・レス、脚本:パブロ・F・フェニベス、撮影:ポール・キャメロン、編集:ケヴィン・スティット、音楽:ヘンリー・ジャックマン、主演:サム・ワーシントン、エリザベス・バンクス、2012年、102分、原題:Man on a Ledge


元刑事ニック・キャシディ(サム・ワーシントン)は、4千万ドルのモナークダイヤモンドを強奪した罪で、刑務所に収監されていた。

ある日、元同僚マイク・アッカーマン(アンソニー・マッキー)が面会に来て、ニックの父が危篤であると知らされる。父親は亡くなり、マイクの計らいで葬儀だけ出席することを許されるが、その場で護衛の警官の拳銃を抜き、車で逃走する。 

その後、ニックはウォーカーという名前で、ニューヨークのルーズベルトホテルの大通りに面した21階をとり、窓の外に立ち、飛び降り自殺を図ろうとする。制止しようと説得する警察に対し、ニックは、交渉役として、女性刑事リディア・マーサー(エリザベス・バンクス)を指名する。・・・・・・


多少の突っ込みどころはあるが、エンタメ性担保ということを、終始決して忘れることなく作られた映画なのは確かだ。

高層ホテルの窓の外、わずかな幅の出っ張りにニックが立っている限りにおいて、緊張感は維持されるが、途中から、観る側に、その真の目的がうすうすわかってくると、それを見計らったかのように、弟と彼女の極秘の活躍や、警察のもうひとつの顔が浮かび上がってくる。


計算されたストーリー展開と、ハラハラする侵入プロセス、ラストのダイナミックな飛び降りシーンなど、映画としては充分おもしろい。深まりゆくものなど、この映画にはないのだ。あくまでも、可視的なエンタメ性のみで迫ってくる。映画なのだから、それでいいのだ。


群衆の中にいた髪の長い男や、ニックのへやの客室係の男(ウィリアム・サドラー)など、最後の方で何かするな、と思っていたら、案の定、それぞれが役回りを果たしており、ついほほ笑んでしまった。

ウィリアム・サドラーは、フランク・ダラボン監督の『ショーシャンクの空に』(1994年)『ミスト』(2007年)でおなじみの顔だ。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。