映画 『不倫休暇』

監督:サビーネ・デアフリンガー、脚本:サビーネ・デアフリンガー、モーゲンス・ルーコフ、音楽:アンディ・バウム、主演:クラウディア・ミヒェルゼン、2007年、92分、オーストリア映画、原題:42plus


キャリア・ウーマンであるクルスティーネ(クラウディア・ミヒェルゼン)は、夫・ゲオルク、娘・ゾニアとともに、ようやく取れた休暇を楽しむため、イタリアの海岸にある別荘にやってくる。休暇中に誕生日を迎えるクリスティーネのお祝いを兼ねての旅行でもあった。

別荘に着くなり、ゲオルクは携帯で愛人と話している。クリスティーネがへやに入ると、若い男タマシュ(ヤコブ・マッチェンツ)が一人で寝ていた。

クリスティーネは倦怠期のきた夫との生活に不満がありながら、恋の相手であるマーティンと別れたばかりだった。

翌日、3人の別荘に、ゲオルクが招いたマーティンと妻リンダがやってくる。リンダはゲオルクの愛人でもあり、ゲオルクとマーティンは互いに友人の妻リンダ、クリスティーネと寝ており、それぞれがその事実を見て見ぬふりをしていた。

クリスティーネはゲオルクと食事に出ると、そこにタマシュがいた。タマシュが言い寄ってきたので、あす、あるホテルで会う約束をする。・・・・・・


インテリ夫婦であるが、クリスティーネは心身ともに疲れ、愛に飢えていた。ヤンキー風な美少年との殺那の満足は、いろいろあっても、ゲオルクとの絆を壊すものではなかった。

ゲオルクは他にも女がいる。ゾニアは処女を失う目的で夜の街に出かけ、マルコとデキる。レストランのチロは、かつてクリスティーネの彼氏だった。家族の話す言葉はドイツ語で、別荘はイタリアにあり、通行人はイタリア語を話し、CDではフランス語の歌がかかる。


何でもありの十字路に立つクリスティーネにも、さまざまな選択の可能性があった。不倫のための休暇になったのは、確かに結果的に一理あるが、紺碧の海、砂浜で踊る若い男女、若い男からの誘惑、別荘地独特の解放感、そんな雰囲気のなかで、倦怠期のなかに42歳を迎えたクリスティーネの女と人生が解放されるのである。


新作で観たときは、不倫休暇という邦題はふさわしくなく、かなり真剣な問題が描かれていると思った。 不倫よりさらにそれを越えたところで、クリスティーネの行く末を占うような内容である。


42プラスのプラスは、プラス・アルファ(+α)の意味だろう。クリスティーネにとってここでの休暇は、結果的に 42+α となる一週間だったわけだ。


タマシュ役のヤコブ・マッチェンツは、独裁のこわさを描いた『The Wave』(2008年)にも出ている。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。