監督:ジョン・ギャラガー、脚本:パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン、製作総指揮:ベン・アフレック、マット・デイモン、クリス・ムーア、ウェス・クレイヴン、撮影:トーマス・L・キャラウェイ、音楽:スティーヴン・エドワーズ、美術:クラーク・ハンター、主演:バルサザール・ゲティ、2006年、86分、原題:Feast(ごちそう)
おもしろい! 大変な傑作! ホラーなのに爆笑!
ここのところ、つまらん映画にばかり当たっていたが、それを一発逆転してしまった。これを観た人だけが知る娯楽性豊かな作品。言葉にするのが難しいくらいだが、ここは落ち着いて文字にしよう。
テキサスの野中の一軒家のようなバーには、今夜も近所の連中や車で立ち寄った人たちが、酒の時間を楽しんでいた。
そこに突然、血のついた服の男が、得体の知れないモノを持って飛び込んできて、すぐに扉や窓を閉じるようわめき散らす。客がどうしたのかと尋ねると、何でも不気味な怪物のようなモノが襲ってきて格闘となり、命からがらここまで来たとのことで、持っているのは、そのケダモノの頭であった。
店内にいた客らはびっくり仰天し何とか自衛策を講じようとするが、そんな矢先に、窓を割ったケダモノの腕らしきものが、窓際にいた男を攻撃し首をつかんだので、みんなで男の体をもって抵抗したが、結局男の頭は持っていかれ、首なし死体がころがるというザマになってしまった。・・・・・・
制作に、インテリのホラー映画プロデューサー、ウェス・クレイヴンとベン・アフレック、マット・デイモンが顔をそろえている。ウェス・クレイヴンは『鮮血の美学』(1972年)、『エルム街の悪夢』(1984年)、『スクリーム』(1996年)の監督だ。この映画製作時、60代半ばであり、ホラーにかける情熱をうかがえる。
冒頭から、新しく登場人物が映るたびに、わざわざストップモーションにして、その人物の名前や職業、特記事項、寿命などが表示され、ハナッから、一味違うホラーだよと言わんばかりの宣戦布告的サービスで始まる。登場人物は多いが、この説明と、人物同士の会話から、少しずつ記憶に残っていくので心配ない。それに、最後まで生き残るのは4人だけである。
この人物紹介は、英語のわかる向きは、英語を見たほうがおもしろい。
ストーリーは、伏線めいたものは活かされず、観客の予想を裏切りながら、退屈にさせるヒマを与えないスピーディな展開だ。バーには二階と地下室があり、ケダモノは一階だけでなく、二階からも襲ってくる。地下は唯一残された逃げ道だ。
老若男女の集まるバーでありながら、ケダモノは男女や長幼の序なんてのはもちろん関知しないから、観客が思ってるとおりにいくとは限らない。スプラッタ・ホラーなので、足の切断、ゲロの描写など基本線は維持されながら、モンスターとの格闘シーンではいろいろバラエティに富んだ壮絶なバトルが繰り広げられる。
そのモンスターときたら、何ともいえず醜い形相とボディをしているが、頭からの突入時などに顔が映るとか、客たちが外を窺(うかが)うときに全身が映るくらいで、しかも短いショットなので、あまり鮮明に細かいカタチまでわからない。
恐ろしいモノは、はっきりと姿を見せないとする鉄則に則ったのだろうか。
モンスターの体の一部がはっきりわかるところがある。それはある事情で体から切り離されてしまうのだが、あのシーンは笑えた。キーワードは、階段と車イス。
この映画の神髄は、何と言っても、ストーリーのよい意味での支離滅裂さかげんと、予想の裏切りが続く展開だろう。シリアスな状況や会話も交わされるなかに、そうした滑稽な展開を用意しているのは、逆に、制作側に実力がないとありえないのではないか。
冒頭、男が入ってくるまでの会話も、なかなか楽しい。要するに、笑えるのだ。ホラーというより、コメディと言ってもよいくらいだ。
編集に一部雑なところもあるが、カメラはよかった。一ヶ所、カメラに血しぶきがかかるシーンがある。この一事をもってしても、反則だらけの映画だということがわかる。
音楽や効果音にも注目しておきたい。
これは、もしかしたらDVD買うかもしれない。ホラーでDVD購入するとすれば、『遊星からの物体X』以来となる。
ヤフーのレビューを見てみたが、2割評価しているくらいで8割方は評価が低い。アマゾンのカスタマーレビューではとんとんだ。こういう映画に、ストーリー性がないと目くじらを立てても始まらないのではないか。最初からそんなものないのだ。
ラストになって、そういえばあの、ちょっと色気の婆さまはどうなったんや、と思っていたら、エンドロールの最中に、ようやく姿を現し…で、いきなりキュ~ン!ブチョ!…そしてまたエンディングに戻る。
女優がみな、きれい。きれいなものを汚してのホラームービーである。
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