監督:フレデリック・シェンデルフェール、脚本:フレデリック・シェンデルフェール、ヤン・ブリオン、撮影:ジャン=ピエール・ソーヴェール、編集:イレーヌ・ブレクア、音楽:ブリュノ・クーレ、主演:ブノワ・マジメル、フィリップ・コーベール、2007年、107分、フランス映画、原題:Truands(ぺてん師)
フランク(ブノワ・マジメル)はパリでコカインの密輸を扱う一匹狼であったが、それでも仲間のジャン=ギィとともに、元締めのクロード(フィリップ・コーベール)の仕事を請け負っていた。
ある日、大口の取引の現場で、撃ち合いとなり、クロードは取引に失敗する。クロードは息子のように可愛がるフランクに、裏切り者を探しだせと命ずる。・・・・・・
パリの闇に生きるヤクザな男どもを描くフレンチ・ノワールとされるが、米国で育まれたフィルム・ノワールとは、よくも悪くも一線を画すようだ。
もともとフィルム・ノワールという言葉が示すように、フィルム・ノワールはフランス初であるが、どうしてもアメリカ産フィルム・ノワールのほう人気があり、凄みと迫力の表現に馴染んでいるためか、何となくヤワな感じに見えてしまう。
ブノワ・マジメルは、髪を黒く短いオールバックにし、眉毛も端を変えるなど、アラン・ドロン風のフランチ・ヤクザに成りきっていて、演技力もある。
ストーリーも単純で、犯罪組織と裏切りを描き、それなりに残忍なシーンや、セックスや暴力シーンもあり、ノワール風ではあるが、やってることは汚くても、やはり絵としてきれいなのである。
それを加速させるのが、登場人物の多さだ。いきなり次から次へと人物が登場し、名前で見分けるのに混乱してしまう。中盤あたりからその心配はなくなるのだが、多人数がスケート場で軽やかにゲームしてるのを眺める感じで、アメリカのノワールに比べ、凄みや男臭さといったものは、画面から匂ってこない。
国柄の違いと思うしかないが、その独特のムードに浸れればよくできた映画と言えるのだが、登場する女たちにしても、役回りが小さく、男の陰に隠れてしまう。
半端に、それぞれ女房としてストーリーに絡ませるより、一層、女は遊び相手くらいにして、男たちの戦いぶりや、闇の人間のスリルを正面に出したほうがよかっただろう。
ここに登場した男たちは、銃をもち、人も殺し、コークを扱うが、まるで普通のサラリーマンが銃をもち、人を殺し、密輸に携わるようなイメージで、闇社会、真の怖さ・凄み、といったものが伝わらないのである。
堅気の世界、例えば、刑事とか、足を洗ったかつての仲間とかいった対比物が現れないので、彼ら全体の住む世界の輪郭が不明瞭で、そのため、殺しや裏切りといっても、命を張ってやってるんだぜ、という真剣みも伝わってこないのである。
密輸というごっこ遊びを見せられた感じだ。
ストーリーとしてはポイントを絞り込み、映像としては汚れた絵がほしいところだ。無精髭や怒鳴り声だけでは、凄みは出ないし、たしかに原題に闇という言葉はないが、ぺてん師ならぺてん師の生きざまをガツンと見せつけてほしかった。
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