監督・脚本:クリストファー・ノーラン、撮影:ウォーリー・フィスター、編集:リー・スミス、音楽:ハンス・ジマー、主演:レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、2010年、148分、英米合作、原題:Inception
上映中迷って映画館には行かなかったけど、DVDで観てみると、映画館で観てもよかったと思う。
この手の映画はとにかく脚本勝負なので、そこがぐらついていると、映像や音楽をうまくやっても失敗になる代物だ。
だから、監督自身が脚本を書く映画は、あまり失敗しないようだ。
ある一件が起きて動き出す刑事ドラマのようなもの以外は、書いてみるとわかるが、脚本というのはとにかく、始まりが難しい。
この映画も映像とは裏腹に、出だしからしばらくはホワンホワンとしているが、ジャスト1時間経過後から本格的におもしろくなる。
アリアドネなんていう名前も哲学的だが、夢の位相を論理的に明らかにしながら、それを実現していく展開で引っ張られる。
かなり几帳面に脚本が書き込まれているので矛盾らしきものはなかったが、無理をしたところが一ヶ所、それと、サイトー(渡辺謙)はこのコブの仕事に満足したのか確かめようがない、という疑問が残った。
雪山の病院で、コブ(レオナルド・ディカプリオ)の妻モル(マリオン・コティヤール)が、ロバート(キリアン・マーフィー)を撃つが、それについて直後にコブはアリアドネ(エレン・ペイジ)に、モルは僕(コブ)といっしょにいたいからロバートを撃った、と言う。
ここだけは、首をかしげてしまう。
夢の第3層へ降りるためにはロバートがいっとき意識不明にならざるをえないので、強引にそういう理屈にしたのだろうか。
コブに依頼したロバートの夢へのインセプション(植え付け)で、サイトーの目的は達成されたわけだが、これはつまり、ライバル企業の跡継ぎロバートが、辣腕をふるっていた父親と同じ経営手法をとると、一層のライバル企業となるが、インセプションによって、ロバートがわが道をいく経営手法をとれば、ロバートの企業は傾いていき、サイトーのライバルではなくなる、ということなのだろう。
これでいいのか?(笑)
たぶんいいのだろうな、コブはサイトーの約束したとおり、子供たちに会えたのだから。
好きなシーンはラストだ。
飛行機のなかでコブが目覚め、各メンバーを見るとき。ディカプリオの目の名演技がすばらしい。
空港のゲートを出ると、仲間たちと挨拶するが、手を上げたりする程度で、爽やかに別れるのがまたいい。
夢というインナードラマなので、京都やパリなど、浜辺や雪山など、とにかく観客を飽きさせないように配慮した努力がよくわかる。
内容柄、どうしてもCGの助けは借りざるをえないのかもしれないが、アリアドネの夢で、街が向こうから曲がってきてワッフルみたいになって、上を車が走っている、などは、まあお愛嬌ってところだ。
キーワードは、コマかな。
メンバーとロバートを乗せて橋から落下する車、あれは『池袋ウエストゲートパーク』でG-boysのキング(窪塚洋介)が乗る黄色い車と同じに見えたが、・・・・・。
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