監督:ピーター・バーグ、脚本:マシュー・マイケル・カーナハン、撮影:マウロ・フィオーレ、編集:コルビー・パーカー・Jr、ケヴィン・スティット、音楽:ダニー・エルフマン、主演:ジェイミー・フォックス、ジェニファー・ガーナー、2007年、110分、原題:The Kingdom
サウジアラビアの外国人居住区で、銃乱射事件が起こり、そこに警官隊や救急車が到着したところでまた、自爆テロが起きる。
米国人に被害者が多いことから、知人にも犠牲者がいたことから、捜査官のロナルド(ジェイミー・フォックス)はサウジ行きを志願する。
紆余曲折があたものの、ロナルドは、グラント(クリス・クーパー)、ジャネット(ジェニファー・ガーナー)らとともに、サウジに飛ぶ。
現地では、サウジ国王から親切な対応を命じられたファリス・アル・ガージ大佐(アシラフ・バーフウム)の部隊が、ロナルドらに協力し、現場での証拠物発見や聞き込みに協力する。・・・・・・
硬派の作品。
冒頭に、アラブ諸国、特にサウジアラビアと米国との関係の歴史が、早足で復習され、映画冒頭につながる。
アルカイダやビン・ラーディンの名前が上がり、フィクションにしても詳細なリサーチに基づいて制作されており、生々しい描写とともに、主要人物のキャラクターが際立っており、ドキュメンタリー風なつくりをしながら、妥協のない、ほとんど一流の作品に仕上がっている。
これらの事件がサウジでは繰り返され、やがて9.11テロに続くようすが見て取れる。
ストーリーは彼らの捜査に焦点が当てられるが、その合間にも、米国やサウジに対する反乱分子の存在の影がちらほら見え隠れしており、現場の緊張感が、そのまま映画の緊張感になっていることに気付く。
良心的に協力を惜しまないガージ大佐の存在は大きく、ロナルドたちが捜査の間に、彼と個人的に話すシーンにも、徐々に打ち解けてきた雰囲気が現われてくる。
事件の黒幕にいたるラストの銃撃戦は、この映画の圧巻であるが、同時に、こうした悲劇に終わりがないことを暗示させ、やりきれない余韻を残して終わる。
社会派の映画のうちでも、もっとも硬派の部類に入るだろうが、手持ちカメラをうまく使い分けたカメラワーク、手際よい編集、激しい銃撃戦、大がかりなロケ、カーチェイスのリアルな描写など、他の追随を許さない秀逸な作品となった。
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