監督:山田洋次、原作:ピート・ハミル「Going Home」(「ニューヨーク・ポスト」1971年)、脚本:山田洋次、朝間義隆、撮影:高羽哲夫、編集:石井巌、音楽:佐藤勝、主演:高倉健、武田鉄也、桃井かおり、倍賞千恵子、1977年、108分、松竹。
タイトルの「幸福」を「しあわせ」と読ませている。典型的なロードムービー。
欽也(武田鉄也)は恋人にフラれたショックから工場をやめ、新車のファミリアを買って、フェリーで夏の北海道に行く。
そこで行きずりに朱美(桃井かおり)と知り合いドライブするうち、オホーツクの浜辺で勇作(高倉健)とも出会い、三人の道行きが始まる。・・・・・・
北海道の雄大な景色を背景に、単線的な物語を、よく練られた脚本とベテラン俳優陣の演技力で、一気に見せてくれる。さすがは山田洋次で、人情のツボをピタリと押さえた展開はたいしたものだ。
特に回想シーンの入れかたのタイミングと描きかたがよく、長さもちょうどいい。
高倉健の渋い演技はみごとで、出所後、初めてビールを飲むシーンや、シーツに触れるシーンは特筆ものだ。
桃井かおりも、返事のしかたや泣きかたなどすばらしいし、ドラマ後半に向けて欽也や勇作と馴染んでいく変化もうまい。
ラストで、二人に近寄らず、遠景から黄色いハンカチと二人を収めた、抑制したカメラで完璧となった。
引用された音楽も、ピンクレディ、キャンディーズから始まり、「なごり雪」を経て、「銀座カンカン娘」、「せいくらべ」と、内容に即した並べ方だ。
渥美清やタコ八郎の登場も的確だし、寅さん映画でお馴染みの谷よしのも、いつもより映る時間が長く、端役でもベテランの演技を垣間見せてくれるのはうれしい。
充分感動的で娯楽性たっぷりの映画ですばらしい。
しかし、やはり原作がアメリカ人ということを自覚させられる。
脚色でかなり変わっているかもしれないが、本筋自体がアメリカ的で、日本的情緒、だらしなさ、恥ずかしさ、悲しみ、感情の不定形さからは縁遠くなっている。
言うなれば、よくでき過ぎたセリフや展開が、優等生映画を出現させた、とも言える。
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