監督・脚本:クリストファー・マッカリー、原作:リー・チャイルド、撮影:キャレブ・デシャネル、音楽:ジョー・クレイマー、主演:トム・クルーズ、ロザムンド・パイク、2012年、130分、原題:Jack Reacher
ほかに、ロバート・デュヴァルも共演、ドイツの映画監督ヴェルナー・ヘルツォークが出演。
それにしても、『アウトロー』というタイトルは、内容とずれた邦題だ。
トム・クルーズ自身が製作の一員に加わり、カーチェイスのシーンはスタントを使わず、すべて自身で行った。今回もまた、トム・クルーズの、トム・クルーズによる。トム・クルーズのための映画と言われてもしかたない。
ピッツバーグのとあるビルから、川を隔てた反対側の遊歩道を歩く女性ら数人が、ライフルで射殺される。捜査の末、ジェームズ・バー(ジョセフ・シコラ)という男が捕まるが、バーは供述を拒否し、ジャック・リーチャーを呼べ、とメモ用紙に書く。
ジャック・リーチャーとは、元陸軍の憲兵隊捜査官で、退役後、一匹狼として刑事まがいの仕事をしている男で、その住所もわからず、連絡のしようがなかった。
しかし、ほどなく、ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)本人が自ら突然現れる。そこには、バーを取り調べた刑事と検事、検事の娘で弁護士のヘレン(ロザムンド・パイク)がいた。ヘレンはバーの弁護士として、そこに来ていたのであった。
バーは護送中に受刑者から暴行を受け、口もきけない状態になっており、ヘレンの弁護は無駄かと思えたが、はじめバーの犯行と思っていたジャックも、真犯人は他にいるのではないかと疑うようになる。
ジャックは軍人仲間としてバーを昔からよく知っており、狙撃の名人であることも知っていた。
その狙撃の名手にしては、狙撃じたいに素人っぽさが多く残っているのだ。
ジャックは何がしかの手がかりをつかもうと、ヘレンの情報を元に動き出すが、今度はジャック自身も、何者かにつけ狙われるようになる。・・・・・・
アクションシーンやカーチェイスシーンなど、けっこう凝ったところも多く、カメラもバラエティに富み、これ以上のアイデアもないほどで申し分ない。
ただ、スケール感が不安定なのだ。紆余曲折もあるストーリーは問題ないと思うのだが、出だしから前半くらいまでの牽引力が、中ほどからダレてくる。
そのかわりに、ラストには、パノラマの広がる石材所を舞台とし、迫力ある銃撃戦も展開されるが、ハラハラ感はすでに収まっているだけに、いまひとつ盛り上がらないのだ。
ストーリーで最後まで引っ張るのは、どんなジャンルのものでも難しい。正攻法のストーリー展開であり、真犯人がジワジワわかってくるのはいいのだが、ある意味、生真面目に作りすぎたのではないか。
ラストになって悪が成敗され正義が勝ち、それに寄与した英雄は去っていく…このアメリカ的倫理観が貫かれた映画は、かつては人気作品になる必要条件だったが、そこを脱したストーリーこそ、アメリカ以外の国の観衆が求めているものではないのか。
真犯人との直接対決で、相手は銃を失う。そのままジャックが撃てば一巻の終わりなのだが、なぜかジャックも銃を捨て、素手での勝負に挑む。
犯した犯罪にふさわしい殺され方こそバランスがとれるはずなのだが、この土壇場でジャックが男気を見せても、かえって不自然である。
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