監督:月川翔、脚本:松瀬研祐、撮影:木村信也、照明:尾下栄治、音楽:ゲイリー芦屋、主演:マキタスポーツ、池松壮亮、佐野史郎、109分。
伊藤博(マキタスポーツ)は、 損保会社に勤めるうだつの上がらないサラリーマン、かつてはロックを歌うこともあった。離婚歴があって、今はひとり暮らし。
黒田甲賀(こうが、池松壮亮)は高校生だが、いわゆる不良で、仲間とカツアゲして小遣いを稼いでいた。
この風采の上がらない中年男と不良高校生が、ある晩、同時に、赤ちゃん誘拐の犯人になってしまう。
伊藤は、朝のテレビ番組の今日の運勢コーナーで、自分の星座の今日の運勢が、何でも思いついた時にすぐ実行するのがよいでしょう、と知り、これを真に受け、夜のコンビニに乗り付けてあった車を、勝手に運転して去ってしまう。
そのコンビニ前でたむろっていた甲賀がその車をバイクで追いかけ、橋の下で格闘となるが、赤ん坊の泣き声を聞いて車に戻ると、後部座席にダンボール箱に入れられた赤ちゃんがいた。
冒頭からちらちら知らされるが、この街ではもうすぐ市長選挙があり、街の再開発派である現市長・犬養とおる(佐野史郎)は、再選するために、ヤクザを使って、ライバル候補で再開発反対の市議・大隈泰三(野間口徹)の一人娘を誘拐させたのであった。・・・・・・
どちらかと言えば、コメディに入るのだろう。
主役二人のストーリーはなかなか難しい。本作もその落とし穴にはまっている。
それぞれの現在にいたるまでの経緯は、たしかに会話や短いカットに表わされているが、それだけでは物足りない。
この二人が出会うこと自体が、ドラマの核になっているのに、そのへんの描写が足りないので、電車で隣り合わせた者同士が出会ったくらいのインパクトしかない。これが最も残念な点だ。
過去の経緯をところどころ回想で挿入するだけでも、だいぶ違っていたはずだ。
ヤクザ集団に追いかけられるなど、逃走シーンが多いのはドタバタ喜劇の常道だが、これも、集団全体から、追う者・追われる者の必死な表情のアップまで、いろいろなカットが組み合わさればいいものを、それがないので、迫力に欠けている。
予算も限られていたようだが、要は脚本の不出来と監督の力がないということだ。
こうなると、役者それぞれの演技力がものを言うしかない。
主役二人は、その責任をみごとに果たしている。
マキタスポーツというのはよく知らないが、池松壮亮はこうした条件にもめげず、役になり切っていた。
子役のときから活躍してきたが、『男たちの大和』でも、仲代達矢・鈴木京香との現在の描写では、15歳ながら存在感を発揮し、細かい演技は注目に値する。
池松が操縦するラストシーンは、あの映画の締めにふさわしかった。
池松主演の映画が出きるのを期待している。もっと深みのある役柄に挑戦してほしい。コイツはできる!
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