監督:中村義洋、原作:筒井哲也、脚本:林民夫、撮影:相馬大輔、音楽:大間々昂、主演:生田斗真、戸田恵梨香、119分、2015年6月、東宝。
特におすすめということもないが、期待していなかったわりには良い作品であった。
インターネットを通じ、ある犯行を予告する人物がいた。
目と鼻のところだけ開いている新聞紙をかぶった男が、ネットカフェのパソコンから、犯行予告を流す。翌日、予告どおりの事件が起き、警視庁サイバー犯罪対策課が捜査に乗り出す。捜査の指揮をとるのは、係長の吉野絵里香(戸田恵梨香)である。
予告犯から被害を受けるのは、社会的には無責任な行動をとった会社や個人であり、ネットユーザーの間では予告犯を支持する者が増え人気も出て、いつの間にか予告犯は「シンブンシ」と名づけられる。
やがて警察は、数回に及ぶ犯行後の防犯カメラの映像などから、それぞれの犯人の背が違うことがわかり、犯人は複数いることを突き止める。
一方、数年前、奥田宏明(生田斗真)は、IT関連の会社をクビになり、ハローワークで仕事を探すにも職がなく、そうこうするうち、日雇いの労働者となった。現場は、山奥の廃棄物処理場だったが、そこでは不法投棄がおこなわれていた。
処理場の小屋には、他に三人の男とひとりの少年が寝泊りしていた。
やがて五人は、それぞれニックネームで呼び合う中になった。
奥田宏明はITに強いのでゲイツ、葛西智彦(鈴木亮平)は関西弁訛りがあるのでカンサイ、木村 浩一(濱田岳)は、「ドラえもん」ののび太に似ているからノビタ、寺原慎一(荒川良々)は腹が出ているのでメタボ、フィリピンから来た日系の少年はひょろっとしているのでヒョロとなった。
この少年はネルソン・カトー・リカルテと言い、奥田に「OTPトークン」というセキュリティキーを見せた。これは、働いていたインターネットカフェがつぶれたときに、少年が持ち出してきたものであった。
ヒョロはよく働いたが、病いに倒れ、山奥のそんな場所で医者も呼べず、そのまま亡くなってしまう。
ゲイツは、残った4人で、あることを実行しようとする。・・・・・・
この少年の持っていた「OTPトークン」と呼ばれるセキュリティキーから、予告犯の犯行が始まっており、これはまさに犯行のキーとなる小物であると同時に、物語が進むうち、これを持っていて亡くなった少年が、犯行の動機となっていることが明かされる。
突っ込みどころも多いのだが、それを覆い隠すのは、「シンブンシ」の狙う対象が反社会行動をした個人や会社であるため、予告犯の行動がいわば「世直し」的はたらきをすることであり、少年初め結びつきをもった若者たちが、社会的に報われない存在だということから、観ている者に同情を引き起こすからでもあろう。
「シンブンシ」が計画的犯行を続けたのには、それなりの動機があった。
社会の底辺にいることを余儀なくされている者たちが、ささいな正義と純情を貫き通すために、結束して予告犯となり、視聴者の共感を得るという運びは、それなりに説得力をもつ。
カメラワークにも特筆すべきものもなく、全体には静かに進んでいくが、海辺の景色や排水路での奥田と吉野のシーンなど、会話に見合った場所選びも功を奏している。
戸田恵梨香はミスキャストだ。偶然いっしょにレンタルした『日本のいちばん長い日』に、NHK放送局員・保木玲子役で出ていたが、この程度に短い出番のほうがいいだろう。
登場シーンは少ないが、窪田正孝(ネットカフェ店員・青山祐一)はいい役をもらった。演技もキラリと光るものがある。
取調べのときに彼のいうセリフが、本作品の本質を表している。「小さなことでも、それが誰かのためになるなら人は動く」
ヒョロを演じた福山康平は、EDで日本人とわかるまで、本当のフィリピン人なのかと思った、本作が映画初登場とのことだが、片言の日本語や愛くるしい表情など演技力もあり、これからの成長が楽しみだ。
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