製作・監督:アルフレッド・ヒッチコック、脚本:ブライアン・ムーア、撮影:ジョン・F・ウォーレン、編集:バッド・ホフマン、音楽:ジョン・アディソン、主演:ポール・ニューマン、ジュリー・アンドリュース、1966年、128分、原題:Torn Curtain、ユニヴァーサル。
東西冷戦下、原子物理学の教授・マイケル・アームストロング(ポール・ニューマン)は、学術会議に出席するため、婚約者である同じく物理学者のサラ・シャーマン(ジュリー・アンドリュース)と、ノルウェー海上をコペンハーゲンに向かっていた。
船上で「本が届いた」という電報を受け取ったマイケルは、コペンハーゲンに着くや、ストックホルムに用があるからと、サラを置いて行こうとするが、不審に思ったサラが調べると、マイケルの行き先は東ベルリンであった。・・・・・・
マイケルの使命は実は、アメリカではまだ成功していない新型ミサイル開発のための情報を、米国政府から隠密に依頼されて、東ベルリンの数学者・リント教授から盗むことであった。サラには何も話していないマイケルは、当初、サラに売国奴だと責められるが、ベルリンに着いてきたサラも、マイケルと一緒にいたいという思いから、しぶしぶ国を裏切る覚悟をする。だが、ある一件で、マイケルの真の使命を知り、そこからはマイケルに協力することになる。
ヒッチコックの映画のなかでは、あまり目立っていない作品だが、かなり水準の高いサスペンス映画となっている。『サイコ』(1960年)、『鳥』(1963年)、『マーニー』(1964年)に次ぐ作品だ。長年組んできたバーナード・ハーマンと対立し、音楽担当は替わっている。
緊迫感を切らさない脚本が奏功しており、カメラも、マイケルと農夫の娘がグロメクを殺害するシーン以外、あえて小細工せず、俯瞰やバストショットを多くし、ここぞというシーンではカットを多用したのも、国際的な出来事という大きな話を矮小化させないことに成功している。ヒッチコックの作品には、女性が出て恋愛テイストを混ぜるとその分サスペンス風味が損なわれるものがるが、本作はそうした<崩れ>がない。マイケルとサラというフィアンセ同士のいきさつに変化をもたせているからだろう。
テネシー・ウィリアムズ原作の『熱いトタン屋根の猫』(1958年)以降人気上昇中のポール・ニューマン、『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)で人気絶頂であったジュリー・アンドリュースを主演に選び、多くの共演者も一癖ある風貌の人物を起用している。
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