映画 『テキサス・チェーンソー』

監督:マーカス・ニスペル、原作・オリジナル脚本:キム・ヘンケル、トビー・フーパー『悪魔のいけにえ』、脚本:スコット・コーサー、撮影:ダニエル・パール、編集:グレン・スキャントルベリー、音楽:スティーヴ・ジャブロンスキー、衣装:ボビー・マニックス、美術:グレゴリー・ブレア、特殊メイク:スコット・ストッダート、主演:ジェシカ・ビール、2003年、97分、原題:The Texas Chainsaw Massacre(テキサスチェーンソー大虐殺)


1973年に発生した異常な事件の再現フィルムから始まり、ラストはここに戻る。

当時、テキサスの田舎道を、5人の若者がバンで走っていると、路上をふらつきながら歩いている少女を轢きそうになる。ようすが変なので、エリン(ジェシカ・ビール)たちはその娘を同乗させる。娘は次第に興奮し、「あの男がいるから、この方向には行きたくない」と狂乱状態となる。・・・・・・


トビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』(The Texas Chain Saw Massacre、1974年)を、全面的に作り直した作品である。


大男がチェーンソーを振り回し、容赦なく人を傷める内容からして、ホラーの本道をいく作品であるが、ホラー映画としては逸品である。

というのは、脚本が細やかに書き込まれており、また、カメラがよく動き、編集もみごとで、ホラーとして人気映画となったのも頷ける。


単線的になりやすいストーリーだが、若者5人と異様な家族の二つの軸で交互に描くことで、展開に牽引力をもたせている。カップル二組を含む5人とその生活ぶりは、スタート直後から数分でわかるようになっている。バンを走らせている目的も話される。

何と言ってもすばらしいのは、始まってわずか10分ちょっとのところで、ショッキングなシーンが現われる。ここに置かれたこのシーンの存在と意味は大きく、観る側は一気に内容に引き込まれる。

ラスト近くでも、きっちり報復をして、観る側もすっきりするのだ。


カメラも優れている。撮影のダニエル・パールは、オリジナル版『悪魔のいけにえ』でも撮影を担当しており、30年ぶりに同じ原作と撮ったことになる。

フレームに人物が詰まったシーンと、遥か遠くに不気味な家を映すシーンをてきぱき交互に使うなど、編集との息もぴったりだ。

薄気味悪い色を多用し、空、雲、建物なども異様な雰囲気を掴むため、フィルターを使い分け、アングルにも凝っている。


さらに、小道具類はホラーの命だが、滴る水や器具類から、さまざまなグロテスクなものに至るまで、異様さや不気味さ、不潔さを表現するのに充分過ぎるほどだ。


殺人鬼のレザーフェイス役、アンドリュー・ブリニアースキーは、身長196cmの元ボディビルダーである。

スタンリー・キューブリックの『フルメタル・ジャケット』(1987年)に、汚い言葉を吐き続ける軍曹役で出ていたロナルド・リー・アーメイも出演している。



日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。