映画 『トラッシュ! -この街が輝く日まで-』

監督:スティーヴン・ダルドリー、原作:アンディ・ムリガン、脚本:リチャード・カーティス、撮影:アドリアーノ・ゴールドマン、編集:エリオット・グレアム、音楽:アントニオ・ピント、主演:ヒクソン・テヴェス、エドゥアルド・ルイス、ガブリエル・ワインスタイン、英・ブラジル合作、ポルトガル語・英語、カラー、2014年、114分、原題:Trash(ゴミ)


3人の少年、ラファエル、ガルド、ラットを演じるそれぞれヒクソン・テヴェス、エドゥアルド・ルイス、ガブリエル・ワインスタインは、地元の住民からオーディションで選ばれている。

この3人の少年たちが棲家にしている家のジュリアード神父は、マーティン・シーン、ボランティアとしてこの家の手伝いをしているオリヴィアは、ルーニー・マーラ、ストーリーの核心人物ジョゼ・アンジェロは、ヴァグネル・モウラが演じている。


リオデジャネイロ郊外のゴミ捨て場には、毎日大量のゴミがトラックで運ばれてくる。

ラファエルとガルドは、たまたま見つけた財布の中を見ると、少しの現金以外に、父親と娘が写った写真や、数字の書かれた暗号めいたメモを見つける。

二人は、どぶ川に住むラットとともに、天真爛漫にも、財布を届け、ふっかけて、大金を手にしようと考える。だが、ラファエルは謎めいたメモから、真相を突き止めようとする。

そうこうするうち、警察は、重大な財布の落とし者がないかどうか、彼らのゴミ山に迫り、少年たちに探すよう指示する。

ある日、ラファエルとガルドだけが捜索に加わっていないことを知った刑事フェデリコ(セルトン・メロ)は、翌朝、ラファエルをパトカーに拉致し、暴力をふるう。・・・・・・


ダニー・ボイルの『スラムドッグ$ミリオネア』(2008年)を彷彿とさせるブラジルの貧民窟が舞台で、警察や少年の追跡劇の舞台はすべて、ぼろい建物や狭く入り組んだ迷路である。

彼らの棲息する場所は、まさにゴミの山であり、中央にたまった水場の上に、丸太を汲んで生活している風景も映る。


3人は14歳というのに、ようやく読み書きができるほどであったが、不正を直観し、「正しいことをやりとげる」という考えのもとに、最後には政治家の悪事が露呈する。

彼らはついに、大金を手にするが、その一部は、ゴミの山から下に向けてばらまかれ、新天地の海沿いに移動し、漁師になることを暗示して終わる。

札が空に舞うさまは、拾うほうからすれば、まさに、カネが天から降ってきたようなものだ。


暗号を解いて、ある墓地に行くと、そこには殺されたジョゼ・アンジェロ(バグネル・モーラ)の娘が隠れ住んでいた。写真にあった少女だ。

ラスト近く、この少女が出現することで、娘は生きていたのだという事実によりそれまでの流れが一変して明るくなる。フェデリコはそこにも来るが、四人は逃げおおせる。


相手が子供であっても容赦のない警察、賄賂がまかりとおる政治の裏側、食う物にも困る日々の生活・・・そうした境遇にありながら、拾ったひとつの財布に対する少年たちの好奇心と正義感、躍動感、生きることへのたくましさ、互いの友情は、見ていてすがすがしい。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。