キャスト・スタッフは第一部とほぼ同じだが、伍代家の次女・順子(よりこ)は吉永小百合に、二男・俊介は中村勘九郎から北大路欣也に、俊介の友人で左翼活動家の標(しめぎ)耕平は山本圭に替わっている。
時代背景は1932年(昭和7年)の満洲国建国から、1934年(昭和9年)の満洲帝国成立、1935年(昭和10年)の華北分治政策、相沢中佐事件、1936年(昭和11年)の二・二六事件、綏遠(すいえん)事件、西安事件をはさみ、1937年(昭和12年)7月7日の盧溝橋事件勃発までに及ぶ。
満洲進出に対する伍代由介(滝沢修)と実弟・喬介(芦田伸介)の考え方の違い、陸軍における皇道派と統制派の対立も明らかになってくる。
日本軍の勢いが激しい現実があるせいか、それとのバランスをとるかのように、抗日の姿勢に力点が置かれている。ただし、第一部同様、反戦的な色彩や説教じみた脚本ではなく、史実には忠実である。
第一部同様、新興財閥・伍代産業の満洲進出と軍部とのかかわり、軍国化していく日本とそれに翻弄される人々が、戦闘シーンを挿入しながら、鮮やかに描かれる。地井武男演ずる朝鮮人活動家・徐在林の活躍ぶりや、耕平ら左翼活動家に対する留置場での拷問的取調べのようすもきちんと描いている。
この第二部では、幾組かの男女の愛が描かれることで、戦争に巻き込まれた時代の人々の心うちまで描き出そうという意欲を見せている。
耕平と順子、俊介と人妻・狩野温子(佐久間良子)、伍代家長女・由紀子(浅丘ルリ子)と柘植大尉(高橋英樹)、医大の医師・服部(加藤剛)と満洲の財閥令嬢にして抗日活動家の趙瑞芳(栗原小巻)のそれぞれの愛は、それぞれの理由で実らぬ恋である。サブタイトルの所以であろう。
第一部では、伍代喬介のもとで働く高畠(たかはた、高橋幸治)とその妻・素子(もとこ、松原智恵子)の愛だけであった。素子はいろいろないきさつがあり、匪賊に殺されてしまう。
第一部同様、中国の市街や室内のセットのほか、この第二部では哈爾賓(ハルビン)のいかにもロシア風の建物や、大連の港の風景など実にみごとで、製作に気合いが入っているのがわかる。
出てくる言葉も、シナ語、朝鮮語、ロシア語などで、満洲に散らばる都市群がとりもなおさず国際的な都市であったことがうかがえる。
大作を撮ってきた監督やスタッフの仕事として、安心して観ていられる映画だ。
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