映画 『特攻大作戦』

監督:ロバート・アルドリッチ、 原作:E・M・ナサンソン、脚本:ナナリー・ジョンソン、ルーカス・ヘラー、撮影:エドワード・スケイフ、編集:マイケル・ルチアーノ、音楽:フランク・デ・ヴォール、主演:リー・マーヴィン 、アーネスト・ボーグナイン、チャールズ・ブロンソン、1967年、150分、原題:The Dirty Dozen(汚れた12人)


1944年3月、ノルマンディー上陸を前に、アメリカ軍のジョン・ライスマン少佐(リー・マーヴィン)は「特赦作戦」と呼ばれる奇妙な作戦命令を承諾した。ライスマン自身が曲者(くせもの)であり、それゆえライスマンがこの任務に適当と判断したのは、ワーデン将軍(アーネスト・ボーグナイン)であった。


特赦作戦とは、陸軍刑務所にいる元軍人で、死刑や長期懲役刑を受けて服役中の重罪人から12人を選び出し、その刑を免除するかわりに、彼らを徹底的にしごき訓練し団結力をもたせ、フランスの森のなかにあるドイツ軍将校らの集まる豪華な城を襲撃し、そこにある通信本部を破壊し、それにより連合軍が進攻できるきっかけをつくるというものだった。


12人の一人ひとりが個性豊かで偏屈でもあり、出だしから先が思いやられたが、ライスマンらの教育と教練によって、12人の服役囚らは、徐々に一人前の特攻部隊へと仕上がっていく。

作戦は成功し、12人の中から何人か犠牲者が出たが、ワーデン将軍は、「汚れた12人」と呼ばれる元軍人たちの功績を認め、生き残った者に対しては、彼らを以前の階級のままに任務に戻ることを約束したのだった。


作戦そのもののシーンは圧巻であるが、それ以上に、訓練のプロセスの一つ一つが見ものである。また、豪華な俳優陣もそれぞれにすばらしい演技を見せてくれる。

ジム・ブラウン、チャールズ・ブロンソンらのほかに、後に『刑事コジャック』で活躍するテリー・サヴァラスも出演している。

もともとテリー・サヴァラスが出ていると知り、この映画を知ったのだが、サイコがかった薄気味悪い悪役を演じていておもしろい。この顔は、どうしたって悪役だ。

日本でも、悪役イコール刑事の役が多いが、この映画といい、『ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急地獄行』(1972年)といい、ねちっこい悪役として、一度見たら忘れられない容貌だ。


この映画自体は2時間半に及ぶ大作であるが、ホンモノの戦車や、豪華な邸宅のセットなども使い、カメラワークも多彩で、映像としてのスケール感があり、観ていて気持ちがよい。できればスクリーンで観たい。


冒頭に、ワーデン将軍らが待ち構えているへやにライスマンが呼ばれ、そこでこの特赦作戦を明かされ、ライスマンがしぶしぶ引き受けるシーンがある。後の戦闘状態や訓練の模様でもないのに、実にカット割りが多いのに気付く。

緊迫したシーンでもあるが、対話シーンを退屈にさせないためだけではないベテランの演出を感じる。カットを多く撮り、後で編集する苦労を厭(いと)わないところに、名作の秘密を見てとることができる一例だ。



日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。