映画 『ボーイズ・ライフ』

監督:マイケル・ケイトン=ジョーンズ、原作:トビアス・ウルフ、脚本:ロバート・ゲッチェル、撮影:デヴィッド・ワトキン、編集:ジム・クラーク、音楽:カーター・バーウェル、主演:レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ、エレン・バーキン、1993年、115分、原題:This Boy's Life


レオナルド・ディカプリオ 19歳、ロバート・デ・ニーロ 50歳のときの作品で、ディカプリオが大物デ・ニーロを相手に、臆せず堂々と演技しているのが頼もしい。


1957年のシアトル近郊の田舎街コンクリートが舞台。

キャロライン(エレン・バーキン)は暴力を振るう夫から逃れ、ポンコツの車に息子トビー(レオナルド・ディカプリオ)を乗せて、砂漠のなかを走っている。キャロラインは明るい性格もあり、これから先も何とかなるさ、といった感じで、トビーもそんな母親が好きであった。

しかし、ある街についても運は付いて来ず、いきなりシアトル行きのバスに乗り、アパートを借りて生活するうち、ドワイト(ロバート・デニーロ)という田舎紳士と知り合いになる。トビーはドワイトを気に食わなかったが、学校でいろいろ問題を起こすため、キャロラインはトビーをドワイトの家に預けることになる。


ドワイトに妻はなく三人の子供と生活しており、トビーが彼らに懐いたころ、キャロラインはドワイトと結婚する。

初めのうちは親切なドワイトであったが、だんだん気難しい一面が偏執的にもなり、トビーだけでなく、キャロラインも段々とドワイトに愛想を尽かすようになる。・・・・・・


原作者の生い立ちをそのまま描いた作品だけあって、想像力によるだけでないリアリティが随所に見られる。生涯ものは飽きが来てしまうが、トビーの少年時代から大学に進学するまでという限られた設定がよかった。ラストでは、バスターミアルで、母親が先にバスで去り、自分の乗るバスが来るまで道を歩くトビーが映される。


こまごまとしたいろいろなエピソードが重ねられ、トビーのよくないところもよいところもありのままに描かれ、好感をもてる。学年ごとにトビーには悪友が現れるが、唯一、オカマのアーサー・ゲイル(ジョナ・ブレッチマン)とだけは、最初に喧嘩はしたものの、途中から仲良くなり、進学用の願書の元の書類を手に入れてきてくれたことで、トビーはコンクリートをようやく離れることができるようになるのだ。


アーサーが言う、こんな田舎町では、君も僕も馴染まない浮いた存在だ、と。アーサーもいつかこんな街を出てやるんだと言っていた。教務課でアルバイトをしているアーサーに書類を盗んでほしいとトビーが頼んだときは、君だけ街を離れるのは気に入らない、と断るが、結局何も言わず、それを持ってきてくれる。トビーが、いっしょに街を出ようと誘ったときには、アーサーは、やはり僕はこの街が好きだ、大きくなったらママの着ていたドレスを着て何かしているだろう、と。

このエピソードは、ストーリー上、よく生きている。


しかし、全体を押さえているのは、やはりすでにベテランのデ・ニーロだ。この映画では、珍しく神経質でやたらに細かい憎まれ役をよく演じている。しつけが厳しいのはいいとして、それが高じて暴君のようになり、わがまま勝手となり、トビーの進学なども気に食わず、意地の悪いことをしまくる。ただ最初のころは、新たな男親らしく、喧嘩のしかたなど教えるシーンもある。


結局、キャロラインとトビーは、着の身着のままで、ドワイトの家を去ってしまう。

妙に思索的なストーリー展開にせず、シンプルで平明なやりとりをシーンにしているので、観やすいし、何度も観たくなる作品だ。



日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。