監督:岡本喜八、原作:大宅壮一『日本のいちばん長い日』、脚本:橋本忍、撮影:村井博、編集:黒岩義民、音楽:佐藤勝、主演:三船敏郎、黒沢年男、笠智衆、山村聡、1967年、157分、モノクロ、東宝。
テーマはいわゆる終戦前日から当日に起きた宮城事件の顛末を中心に描かれる。
映画そのものは、1945年7月26日に、連合国によりポツダム宣言が発せられたときから始まる。天皇の御聖断を仰ぎ、鈴木貫太郎内閣がポツダム宣言を受諾し、天皇の終戦の詔書を放送するためその玉音を録音・保管し、8月15日正午にラジオ放送されるところで終わりとなる。
この推移を背景として、承詔必謹の習わしのもと、陸軍大臣阿南惟幾(あなみ・これちか、三船敏郎)の苦悩の姿と、畑中少佐(黒沢年男)ら戦争続行を望む決起将校らの動きを中心にストーリーが展開していく。
ちなみに、女優では新珠三千代だけがちょっと出るくらいだ。
映画として底知れぬ力強さをもっており、往年の俳優がオールスター出演ともいうほどで、軍人その他を真剣みをもって演じ切っており、観ていて快い。終戦の詔書ができるまでや、御名御璽を押印されたあとの各大臣の筆記まで忠実に再現され、わずかに実写フィルムも挿入される。全般的に、この二日間の史実を習得するにも格好の材料となる。
後に数々の大作を成功させる橋本忍の脚本がすばらしいし、これも後々邦画の大作では必ず登場する佐藤勝が音楽を担当していることにも注目したい。
後に反乱軍と名指しされる畑中らの気持ちは、映像や演出から痛いほどよく伝わり、終戦前夜のそれぞれの立場での必死さ加減が間断なく描かれ、緊迫感が維持され、2時間半余りという長さを全く感じさせない。
テーマ自体が緊迫感を孕んでいるので映画として得をしているが、それだけに作りを誤れば一挙に駄作になりやすい危険もある。内容にふさわしいこうした大作があることを誇りに思える作品であり、忘れてはならない作品であると思う。
橋本忍作品のなかでは、山田洋次との共同脚本による『砂の器』に優るとも劣らぬ、邦画を代表する作品だ。
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