映画 『タワーリング・インフェルノ』

監督:ジョン・ギラーミン、製作・アクションシーン監督:アーウィン・アレン脚本:スターリング・シリファント、撮影:フレッド・J・コーネカンプ、編集:カール・クレス、ハロルド・F・クレス、音楽:ジョン・ウィリアムズ、主演:スティーブ・マックイーン、ポール・ニューマン、1974年、165分、原題:The Towering Inferno(=そびえ立つ地獄)、ワーナー・ブラザース・20世紀フォックス共同製作・提供作品。


『大地震』と同じ、1974年のパニック映画。こちらは火災の映画で、このあと、本格的な火災を扱うのは『バックドラフト』(1991年)くらいだ。

実際の炎の姿を横に、消防士たちの勇気ある活躍ぶりを描いている。


『レマゲン鉄橋』の監督で、こちらは長い映画だが、長さを感じさせない。

パニック映画は、そのパニックにもより、ラストまで緊迫感を維持しつづけるのが難しいと思うが、素材が火災であるため、火の拡大をうまく脚本に組み込み、飽きのこない作品となっている。

常に二つの場所での出来事、すなわち、火災現場と最上階でのパーティ会場、この二つを交互に描いたことの意義は大きい。


この映画も、二度と同じようなシーンを繰り返さない贅沢なつくりで、火災もかなり始まりに近いほうで観客に見させるため、最上階でパーティーを楽しむ人々の運命を考えるという優越感を与えてしまうので、それにより観客は火災見たさの関心以上に、映画に入り込んでしまうのである。


開始1時間で、愛し合っていたがために孤立したカップルが死亡する。使ってはいけないエレベーターが戻ってくると、中は燃え盛り、火だるまの男が出てきて倒れる。このあたりから、パーティー会場にいた人々は、現実的に火の手がすぐ近くに迫っていることを知り、恐怖のどん底に落とされるが、それを観ている我々も、その状況に巻き込まれてしまうのだ。


各所にエピソードをはさみこみ、ラストまで緊迫感を維持させた脚本の勝利だ。

消火現場だけでなく、消防士相互のやりとりにも配慮があり、亡くなった消防士の姿を映すことも忘れていない。


地道に進んでいくテンポもよく、災害映画としては優れた作品だ。

製作に、20世紀フォックスとワーナーブラザースが並んでいるのは、似た企画を同時期にもくろんでいたため、両者が協力して一本の映画にしたためだ。

日本なら、東宝と松竹がコラボするようなものだ。ありえない・・・



日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。