映画 『P2』

監督:フランク・カルフン、脚本:フランク・カルフン、アレクサンドル・アジャ、グレゴリー・ルヴァスール、撮影:マクシム・アレクサンドル、音楽:トマンダンディ、主演:レイチェル・ニコルズ、ウェス・ベントレー、2007年、97分、原題:P2、R18+


P2とは、地下2階駐車場のこと。

クリスマスの夜、アンジェラ(レイチェル・ニコルズ)は残業を終えて地下2階に降り、車のエンジンをかけようとするがかからず、タクシーを呼んでもらおうと警備員事務室に寄る。一人でいた警備員トム(ウェス・ベントリー)が車を直そうとするがやはり直らず、アンジェラはタクシーを呼ぶことにする。

やがてタクシーは来るが、1階のドアが開かず、アンジェラはトムのところに戻るが、・・・・・・


ビルの地下駐車場に軟禁された女と、片想いを伝える警備員の変質的な男とのせめぎ合いが続く。

クリスマスイヴという誰も残らず戻りもしない日の夜という設定がよく、ストーカー気味のサイコ野郎の変質ぶりもよい。


ああした状況になれば、誰もがああするだろうというアンジェラの抵抗ぶりも、それだけにリアルだ。

サイコがかったサスペンスで、何ヵ所かグロいシーンが瞬間的に映るが、わりとできはよい。


ファーストシーンからして、この映画、カメラがよい。

冒頭の長回し、地下駐車場という広い空間をそのままとらえる映像、不安をあおるカット割りなど、けっこう丁寧に撮られている。

ようやくラストで外に出られたアンジェラの上に粉雪が舞っているのもよかった。

スクリーンで観たい映画だ。


レイチェル・ニコルズは初め、髪をうしろにまとめ、いかにも品のよいOLだが、襲われてからは髪型もメイクも変わる。映画のおもしろさのひとつに、女優の変身ぶりがある。

初めは受け身であったのが、徐々に強い女になっていくプロセスもよい。


やはりサスペンスには、ある程度の肉体派美人が不可欠で、そういった面からも、仕上がりのよい作品になっている。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。