監督:ブレイク・エドワーズ、脚本:J・P・ミラー、撮影:フィル・ラスロップ、編集:パトリック・マコーマック、音楽:ヘンリー・マンシーニ、主演:ジャック・レモン、リー・レミック、ジャック・クラグマン、1962年、117分、モノクロ、原題:Days of Wine and Roses
前年に『ティファニーで朝食を』(1961年)を撮った同じ監督の作品とも思えないが、コトの真相を考えるに至るとき、何かしら共通するものはある。
タイトルと音楽は有名だが、なかなか観てもらえてない映画。
ムーディな音楽と裏腹に、実に深刻なテーマの映画だ。
アル中(アルコール中毒、今のアルコール依存症)を扱った映画で、映画のテーマとして異例である。
PR会社のセールスマン、ジョー(ジャック・レモン)は取引先の秘書であるキャステン(リー・レミック)と出会い、何とか口説き落として結婚する。
ジョーは接待営業のため飲む機会も多く、一児をもうけながら、キャステンも酒に溺れていく。・・・・・・
ジャック・レモンとリー・レミックの演技がすばらしいということに気付く。ストーリー展開もよく、時間を追うごとに変化する二人の表情とメイクアップがすばらしい。
酒に溺れることの恐ろしさを描いてみせるが、それは同時に、夫婦の問題のすべてにかかわってくる。
ジョーは断酒会に加わり、酒を絶ったと思いきや、また酒に溺れることを繰り返すが、夫に影響されて酒を始めた妻は、ついにアルコールから逃れられずにエンディングとなる。
キャステンが酒を覚えるにいたるシーン、それはジョーが酔って帰宅してわめき散らすシーンなのだが、ここのジャック・レモンの演技はそれこそアカデミー賞級ものだ。
前半のところどころに彼らしい笑わせるシーンもあるが、やがてドラマは実にシリアスな展開に入っていく。
二人が橋の上で語り合うシーンは、この映画のなかで最もロマンティックなシーンで、その後にあのような悲劇が二人を見舞うとは信じられない。むろん観客にそう思わせるための前置き的役目を果たすシーンでもある。
タイトルにワインの文字があるが、ワインだけが出てくるわけでなく、象徴的に使われた言葉だ。バラも同様だ。
しかしジャック・レモンがこれほどの演技派とは思わなかった。演技とはこういうものを言うという手本になる。
リー・レミックは『オーメン』が有名だし、ジャック・クラグマンは『十二人の怒れる男』の陪審員5番だ。
0コメント