監督:ロマン・ポランスキー、脚本:ロナルド・ハーウッド、ロマン・ポランスキー、撮影:パヴェル・エデルマン、編集:ハーヴ・デ・ルーズ、音楽 ヴォイチェフ・キラール、主演:エイドリアン・ブロディ、トーマス・クレッチマン、仏独英ポーランド合作、2002年、148分、原題:The Pianist
ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン(ウワディク)の伝記物語の映画化。
伝記モノは事実を再現してつなげていくので、それ自体に付き合わなければならず、だいぶ苦痛であるが、その伝えんとする事実そのものに価値があるならば、付き合わなければならないだろう。
1939年9月のナチスによるポーランド侵攻から、ソ連の侵入によりナチスが撤退するまでを、ピアニストであるウワディクの家族や友人と、戦時中の彼の生きざまを中心に描く。
殺し殺されるより、住居を奪われ、ゲットーに強制移住させられるなどの、ポーランド内のユダヤ人迫害は実に悲劇的であり、人種や人間の尊厳など微塵もなく、みじめそのものだ。
名を知られたピアニストであったので隠れ家を作ってもらうものの、そのへやから見えるのは、仲間の市民がドイツ兵に殺される現実ばかりであり、ウワディクはそうした光景を目の前にしながら、自信ではいかんともしがたく、このころの彼のもどかしい表情は痛ましい。
ラスト近くドイツ人将校に発見されるが懇意にされ、彼の前でショパンのバラードを一曲披露する。二人にほとんど会話のないのが、バラードに似て重苦しい雰囲気を生む。
ショパンを生んだポーランドの悲劇を、一人のピアニストであるユダヤ人を通して描いた名作だ。
内容からして抑揚に富むことなく、同一系統色の画面は常に重苦しいが、偽りのない史実を伝える誠実な映画だ。
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