監督:スティーヴン・スピルバーグ、原作・脈本:リチャード・マシスン、撮影:ジャック・A・マータ、編集:フランク・モリス、音楽:ビリー・ゴールデンバーグ、主演:デニス・ウィーバー、1971年、90分、原題: Duel
スピルバーグ、25歳のときの初期作品。
ほとんどセリフがないので、見ていて楽だ。
25歳のときのテレビ用映画ですが、アメリカ国内外で人気を呼び、劇場用として公開されるようになった作品で、この映画で初めてスピルバーグの名は世界に知られることになった。
一介のサラリーマンの運転する乗用車と、大型タンクローリーの追い越し・追い越されの繰り返し、といえばそれまでで、たしかにテレビスケールの作品ではあるが、サスペンスの基本を狙った意図が当たって、有名な作品になっていった。
乗用車とタンクローリーが激突するわけではなく。タンクローリーが乗用車に、後ろからわざと追突するシーンはある。
スピルバーグ作品で有名なものに『ジョーズ』があるが、『激突』から『ジョーズ』あたりまではサスペンス色濃いドラマが中心で、しかも、<恐怖の対象が見えていない>というスタイルをとっている。
この『激突』でも、タンクローリーの運転手の太い腕が見えるシーンが一ヶ所あるだ。
乗用車は善であり、タンクローリーは悪である、という軸に乗せて2台の車のカーチェイスが繰り広げられますが、この悪は執拗で、また、偽善をも象徴しているようです。さらに、その偽善を応援する風潮も見え隠れしており、この映画の善は常に孤独にさらされている。
スピルバーグにも人間としての哲学的思考はあっただろう。この世界を実に単純に善と悪に分けて、映像で見せまくってくれたのだと思う。
そして、やはり、たしかに、最後に勝つのは善なのであり、これが欧米でヒットした要因とも思われる。
撮影についてのエピソードもいろいろあるようで、とにかく、これだけ単純な話を、ほとんど映像だけで引っ張れたということで、彼は大いに自信をもっただろう。
カーチェイス、爆発、なぐりあい、危機一髪…と、アメリカ映画の定番があるかと思えば、年取った普通のアメリカン、スクールバス、ガソリンスタンド、コインランドリー…といった日常風景も登場し、全く尊大なところのない、それゆえにテレビサイズではあるが密度の高い、遊び心にも配慮した、娯楽作品となった。
肩の凝らない作品なので、重い映画の前後に見るとよいのでは?
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