監督:脚本 ジュゼッペ・トルナトーレ、撮影:ブラスコ・ジュラート、編集:マリオ・モッラ、音楽:エンニオ・モリコーネ、主演:フィリップ・ノワレ、ブリジット・フォッセー、1988年、175分、伊仏合作、原題:Nuovo Cinema Paradiso
このディレクターズカット版以外に、124分(国際版)、 155分がある。
イタリアのいなか町が舞台で、そこの庶民の唯一の娯楽である映画が人々に愛される姿と、新築なった映画館<ニュー・シネマ・パラダイス>が取り壊されるまでが、映画技師アルフレッド(フィリップ・ノワレ)と、彼を慕い映画好きになる子供サルヴァトーレを中心に描かれる。平行して、成長した青年サルヴァトーレの恋と別れが描かれるが、ラスト近く老いた二人は再会し、当時のなりゆきを話す。・・・・・・
子供の目を通して映画に対する情熱が語られているのがうれしくなる。映写室の中が細かく映されるが、壁に『カサブランカ』のポスターなどが貼られ、映写のための苦労も伝わってくる。
<ニュー・シネマ・パラダイス>ではさまざまな白黒映画が上映され、当時の名作のさわりが出てくるのも楽しい。<ニュー・シネマ・パラダイス>になる前の映画館では、館内の人々のようすが細やかに描写されて滑稽みも忘れていない。
3時間の映画として、過去の恋物語に比重の移る後半三分の一くらいにやや間延び感があるが、二人の別れるときのいきさつや今に至る気持ちが語られるので少し救われる。
ラストで、かつてカットされたキスシーンだけをつなげてサルヴァトーレがスクリーンを見入り、苦笑いしたり涙ぐんだりする。子供のころ、アルフレッドが命じられてカットした部分をサルヴァトーレがもらっていたものを編集したものだ。
かつてのサルヴァトーレの恋人エレナの現在を『禁じられた遊び』のブリジット・フォッセーが演じ、名演技を見せてくれる。
お馴染みエンニオ・モリコーネの、その場その場にふさわしい音楽が美しい。これがなければこの映画はもっと平坦なつくりになってしまったような気がする。
アルフレッドの棺が、取り壊される寸前のニュー・シネマ・パラダイスの前を行く。さりげないが感動的なシーンだ。棺を先導する神父と子供は、かつて、アルフレッド自身と映画館にもなる教会の神父の姿であった。
もう一つ、さりげないが印象的なシーンとして、青年になったサルヴァトーレが、母、妹、そしてアルフレッドと別れ、ジャンカルドの駅を離れるシーンだ。窓から三人を見るサルヴァトーレ、しばらく列車が動くと、三人以外に手前に子供が座っている。意味なくあの位置に子供を座らせるわけはなく、子供のサルヴァトーレを暗示しているとみた。
長い映画ではあるが、誠実に撮られた良作だ。
イタリア映画によくある「お話」のシーンが何ヵ所かあるが、大目に見よう。
0コメント