映画 『ストロベリーショートケイクス』

監督:矢崎仁司、原作:魚喃(なななん)キリコ『strawberry shortcakes』、脚本:狗飼(いぬかい)恭子、撮影:石井勲、編集:多田徳生、音楽:虹釜太郎、主演:池脇千鶴、中越典子、中村優子、岩瀬塔子(魚喃キリコ自身)、2006年、127分、R15+


いかにも原作・脚本ともに女性の作品らしい。

これも、何がどうというほどでないのだけど、わりと好きな作品。池脇千鶴が出ているというのもある。

里子(池脇千鶴)、ちひろ(中越典子)、秋代(中村優子)、塔子(岩瀬塔子)、四人それぞれの女の子たちの日常から、一歩奥に入ったところでの心理劇で興味深いし、生活ぶりが細やかに描かれていてわかりやすい。

全体に淡い色使いの画面で、塔子の描くイラストの配色だ。

 

傷つきやすいにもかかわらず、いや傷つきたくないから、互いに優しかったり装ったりする日常が過ぎるが、恋の終わりは正直に残酷にもやってくる。でもまた、がんばっていくんだ、それしかないじゃんという理念は好きだ。

ラストに、例によって海が出てくる。

 

ちひろは、海に涙を捨てて、出直しだ。

一つの物語が終わった塔子、ちひろ、秋代、に対し、イントロですでに一つ終わっていた里子は、恋がしたいなあ、とつぶやく。


夜のシーンの雰囲気がよい。時間的に深夜がよく出てくる。音楽もあまり入らず、わずらわしくない。

ちひろと塔子は同居しているが、ひとりで生きている四人の女たちの実像を切り取り、心のひだまで入り込んで描いた作品だ。

 

池脇千鶴は、こういう役を演ずるとピタリとはまる。ちょっと贔屓目もあるけどね。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。