監督・脚本:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー、撮影:アルマン・ティラール、編集:マドレーヌ・ギュ、ヘンリ・ルスト、音楽 ジョルジュ・オーリック、主演:イヴ・モンタン、シャルル・ヴァネル、1953年、149分、仏伊合作、フランス映画、モノクロ、原題:Le Salaire de la peur(=恐怖の報酬)
南米ベネズエラと思われる国の田舎町は、猛暑に加え不景気で、大の男たちが昼間からゴロゴロしている。スペインの植民地だったからスペイン語をはじめ、移民も多く、フランス語やイタリア語、英語が話されている。
500km離れた油田で大火災が発生し、大型トラック2台分の大量のニトログリセリンが必要になる。安全装置のないトラックでニトロを運ぶのは命がけであり、石油会社は、職のない者4人の男に、2000ドルの報酬で運ばせることにする。
選らばたマリオ(イヴ・モンタン)ら4人は、二人ずつ2台の車に乗り込み、少しの衝撃でも爆発するニトロを、トラックを徐行させながら目的地へと向かう。
映画の大半は、この運搬途中でのさまざまな危機や困難の克服に当てられている。
このプロセスで、街の男4人の素顔が描かれ、単純なハラハラドキドキで終わらない人間ドラマに仕上がった。
一台は途中で爆発し跡形もなくなり、この衝撃で壊れたパイプラインからは石油が溢れだし池のようになったところに、二台めが通る。
相棒は石油の池に浸かりトラックを誘導するが、倒れて見えなくなっていた木の枝に足を取られ、そこをトラックが抜けていく。
ここで足に瀕死の重傷を負った相棒は、目的地寸前のところで絶命する。
結局、目的地まで着いたのは一人だけで、火災現場では大いに歓迎される。
翌日きれいなトラックで、男は意気揚々と出発地の街をめざす。街ではこの知らせを聞いたバーの主人やガールフレンドは大いに喜び、シュトラウスのワルツに合わせて踊りだし、それに呼応するかのように、男の運転するトラックも、きのう来た道をダンスを踊るようにはしゃいで蛇行運転する。
喜びは束の間で、トラックは谷底へ消える・・・・・・
ニトロを運ぶときの困難さに、タイヤなどのクローズアップを何度も取り込む演出で、うまくハラハラ感を出している。
目的地での火災もすさまじい炎で、手前を男に歩かせた演出も効いている。
ラストでトラックが谷底に転げ落ちて大破するシーンは迫力がある。
転げ落ちて死んでいる男が手にしていた物は、はるか遠い故郷パリの、地下鉄の切符だった。それはいつもへやの壁に飾っていたものだった。
彼の帰りを待つガールフレンドの絶望以上に、彼自身が故郷を二度とおとなうことができなくなった絶望が画面に広がる。
古い映画で長いが、ハラハラ感に人間像を重ねて描いた力作だ。
異国にいて故郷を思う映画として、ジャン・ギャバン主演の『望郷』(1937年)を思い出した。
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