映画 『CURE』

監督・脚本:黒沢清、撮影:喜久村徳章、編集:鈴木歓、音楽:ゲイリー芦屋、主演:役所広司、萩原聖人、1997年、111分、CURE=癒し。


関連性のない殺人事件が続くが、死体には必ず首にXの形に切った跡があった。

刑事・高部(役所広司)は犯人を追ううち、間宮という記憶喪失の男(萩原聖人)と出会う。犯人はみな、この間宮と会っており、催眠状態になって事を仕出かしたのではないかという疑いが出てくる。・・・・・・


この映画、カメラワーク、フレーム処理が大好きだ。長回し、横移動、わざと引いた撮り方も多い。ロケ場所やセットも好みだ。このいわばサイコホラーサスペンスのような映画は、これらカメラとロケ場所がなければ完成しなかったろう。

そこに不気味な効果音が使われる。


高部の妻も精神状態が不安定であり、高部も幻覚を見るまでになる。カラの洗濯機を何回も回す妻、ぶつぶつ不平を言う男、光の点滅、流れる水など、日常的に見られる光景と非日常的な出来事の境を突くような映像が流され、不気味な雰囲気を醸し出している。空中を飛ぶようなバスのシーンもおもしろい。


演技への演出も細かいが、それに役所、萩原がよく応えている。萩原聖人は適役で表情が決まっている。また、わりと笑顔をよく知る俳優をシリアスな役柄に使っており、そういうベテラン陣の存在も大きい。


いろいろ片付き、ラストでさっぱりした顔で食事をする高部が映され観てるほうもひと安心するが、本当のラストシーンは書かないほうがいいだろう。


雑踏の音と悲しげなピアノ曲が流れるエンドロールもいい。

自分の知るかぎり、かなり完成度の高いサイコの邦画で、サイコの好きな人にはオススメだ。


日常性の地平

映画レビューを中心に、 身近な事柄から哲学的なテーマにいたるまで、 日常の視点で書いています。