監督・脚本:リュック・ベンソン、撮影:ティエリー・アルボガスト、編集:シルヴィ・ランドラ、音楽:エリック・セラ、主演:ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン、ゲイリー・オールドマン、1994年、133分、仏米合作、原題:LEON
いまだかつて自分の周囲で、この映画だけはけなす人間がいない。日本でも性別・年齢に関係なく、かなりの人間が観ている映画だ。同じ人が何回も観ている映画でもあろう。
ストーリー、カメラワーク、音楽、配役、セリフが完璧だし、ストーリーにもカメラにも音にも遊びがあり、みごととしか言いようがない。
版が二つあるが、劇場版(110分)より完全版のほうがいい。
ほとんどのシーンが印象的でいちいち書けないくらいだ。
この映画を魅力的にしているものは何なのだろう。
やはりまず設定で、「クリーナー」をなりわいとする、観葉植物だけが友達の孤独な男レオン(ジャン・レノ)と、帰るところを失った12歳の少女マチルダ(ナタリー・ポートマン)の組み合わせだろう。この12歳という年齢設定が成功した。生意気盛りの年齢でありながらマチルダの涙や純情は、大のおとなの男であるレオンに通じていく。
冒頭に、レオンの実力を示す場面があり、それを終えてひとり地下鉄に乗り、へやに戻ると男の日常をこなす。タバコを吸わず牛乳しか飲まない設定もいい。レオンのキャラクターはこれでわかる。
次には、遊びの要素が散りばめられていることだ。
屋上でのライフルの練習のあと、二人の生活ぶりが描かれる。俳優当てごっこや水かけごっこも無邪気でよかった。無学な殺し屋の男が少女と戯れるシーンは楽しい。
二人であちこちを回ってドアの覗き穴にガムを詰めてチェーンを切るチームワークや、レストランでマチルダがシャンペンを一気してげっぷをするシーンなども楽しい。
麻薬取締局のスタンスフィールド(ゲイリー・オールドマン)が携帯容器からドラッグを取り出して噛み砕くサイコな演技や、部下に命ずる ‘e-v-e-r-y-o-n-e!!!' の絶叫もおかしい。
ホテルの受付のオジサンにマチルダが、「彼は父親ではなく愛人なの」と言ったあとのオジサンの顔も笑える。
愛するか、さもなくば死ぬかの緊迫したシーン、初めてマチルダに恋を打ち明けられてレオンが壁に頭をつけるシーン、レオンが過去を話すシーンなど印象的だが、やはりあのベッドのシーンがいちばんすばらしい。
ふだん椅子で寝るレオンの靴をぬがし、レオンに腕枕させ、マチルダは反対の方を向いて横になる。カメラは真上から少しずつ寄ってくる。音楽もいい。
二人の愛は、レオンを仕留めるためにスワットや重火器まで登場することで、その威力や数などとバランスがとれるほどに大きいものだった。
スタンスフィールドの部下たちやトニー(ダニー・アイエロ)など、キャラクターや外見が個性的なのもよかった。
マチルダの弟はかわいいし、マチルダのまま母や、冒頭の太っちょ相手のデリヘルにもかわいい女優をそろえるなど、わずかな登場の人物も厳選されている。
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