監督:ドミニク・モル、 脚本:ジル・マルシャン、ドミニク・モル、撮影:ジャン=マルク・ファブル、音楽:デヴィッド・ホイッテカー、主演:シャルロット・ゲンズブール、シャーロット・ランプリング、2005年、129分、フランス映画、原題:Lemming
雰囲気は『ステイ』『隠された記憶』といったアノ手の映画。
サスペンスには違いないが、特別に恐ろしいものや恐ろしい映像が出てくるわけでもなく、日常の風景のなかに、異様なやりとりを作り出してサスペンスを醸し出している。
しかしそれにしても、雰囲気で観る映画だ。
ホームセキュリティの技術者であるアランはベネディクト(シャルロット・ゲンズブール)と二人の幸福な生活を送っていた。
ある晩、社長のリシャールと妻のアリス(シャーロット・ランプリング)を家に呼び、食事をとることになるが、二人が来たのはだいぶ遅れてであった。・・・・・・
冒頭のアランのモノローグにあるように、社長夫妻が来たこの晩からアラン夫婦の仲が狂い始める。
ストーリーは中盤から虚実乱れる感じはするものの、ベネディクトが向かいの家の少年を見つめるラストシーンに至るまで帳尻が合っていて気持ちよい。
カメラどりもごく普通で、特筆するようなシーンはなく、映像の色合いは、フランス映画にしてはカラフルでなく、インテリア、調度品、衣装、車など、アイボリー系に統一されている。
カメラ、色調が抑制されたなか、そうなるとストーリーと役者の演技いかんにかかってくる。
しかしそこはシャーロット・ランプリングがきちっとやってくれていて、この人こういう役やらせたら右に出る者なしだ。
シャルロット・ゲンズブールも、華やかな笑顔のシーンは少なく、とまどいや不安をみごとに表現している。
レミングというのはハムスターのような小さなネズミで北欧にしかいないという説明のセリフがある。
ストーリーに間接に絡んでくるからには、この一匹のレミングは何らかのメタファであるには違いない。排水パイプのなかで死んでいたレミング、妄想のなかに多数発生するレミング、……おそらくは、繁殖率の強い齧歯(げっし)類を、死や再生を繰り返す不気味な世界の到来の象徴としたかったのかも知れない。
個人的にこういう映画は好きな部類だ。やはり映画というのは発掘していかないと、趣味に合う映画には出会わない。
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