監督:ジョン・ヒューストン、脚本:アーサー・ミラー、撮影:ラッセル・メティ、編集:ジョージ・トマシーニ、音楽:アレックス・ノース、主演:クラーク・ゲーブル、マリリン・モンロー、モンゴメリー・クリフト、1961年、124分、原題:The Misfits
西部劇の様相だが、決して万人受けする映画ではなく、マリリン・モンローが出ているといっても、話の内容がやや哲学がかっているので、初めて観た人は狐につままれたような印象をもつであろう。
元々アーサー・ミラーという劇作家が当時妻であったマリリン・モンローのために書き下ろした作品が元になっているので、マリリンという人間を描き出したようなドラマだから、セリフにしてもなかなか一般受けしにくいところがあるためである。
しかし、マリリン・モンローとクラーク・ゲーブル、それにモンゴメリー・クリフトが共演していて、監督がジョン・ヒューストンとくれば興味津々だ。ヒューストンは『アスファルト・ジャングル』でデビュー直後のモンローを端役で使っている。
『荒馬と女』完成後4日目にゲーブルが亡くなり、モンローにとっても遺作となったことでも有名な映画だ。
当時としての現代版西部劇風でありながら内容は思索的である。登場人物の登場、人数、舞台が都会から田舎に移ったあとの人数、登場の頻度、登場のしかたなど、いかにも劇作であると感じる。
離婚したばかりのロズリン(マリリン・モンロー)は年輩の親友(セルマ・リッター)とうさばらしにバーに行くが、そこで、自由に生活を満喫する熟年の西部男ゲイ(クラーク・ゲーブル)と出会い、紹介者のギドー(イーライ・ウォラック)の家まで行き、四人で団欒の時を過ごす。
ここでのダンスシーンはエピソード風な映像としてすばらしい。モンローが靴をぬぐところもよい。
再びこの家を訪れ、ゲイに親しみをもったロズリンは、誘われてロデオを見に行くが、途中で四人に合流したパーマ(モンゴメリー・クリフト)が落馬してケガをするのを見て、いたたまれなくなり、もう帰るということになる。
そのうちに、ギドーが持ちかけた話から、野生馬を捕獲して売ろうということになり、男三人とロズリンは出かけるが、馬を捕まえるところを目の当たりにしたロズリンは耐えきれなくなり、遠くから三人を人でなし、嘘つきなどと喚き叫ぶ。・・・・・・
都会にいたまだ30代の女と西部育ちの奔放な熟年男、この二人を軸に、育ちの環境や生い立ちからくる理解の仕方の食い違いや感情の行き違い、また人間の優しさや人生の交差を描いたドラマだ。
ジョン・ヒューストンといえば、先ほどの『アスファルト・ジャングル』や『チャイナタウン』のようなフィルム・ノワールが有名だが、この映画でもフィルム・ノワールで培われたカメラどりなど、その腕前は衰えていない。
二人以上の人間がフレーム内にいるときのアングルやそれぞれの距離、向き、立ち居振る舞い、奥行きなど空間処理もうまい。
ロデオのシーン、野生馬の捕獲シーンなど迫力がある。モンローの豊満な存在感などももうまく撮っている。
急死しなければ、まだまだモンローはいろいろな役柄ができたはずである。モンローの可能性を見た映画でもある。
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